Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

特別プログラム 消化器
ワークショップ 消化器4 肝臓の硬さ診断:その精度と使途

(S299)

VTQを用いた肝疾患診療のこころみ

Attempt of medical care to the chronic liver disease using VTQ

青木 智子1, 2, 3, 西口 修平2, 飯島 尋子1, 2

Tomoko AOKI1, 2, 3, Shuhei NISHIGUCHI2, Hiroko IIJIMA1, 2

1兵庫医科大学超音波センター, 2兵庫医科大学内科肝胆膵科, 3公立八鹿病院内科

1Ultrasound Imaging Center, Hyogo College of Medicine, 2Division of Hepatobiliary and Pancreatic Diseases Department of Internal Medicine, Hyogo College of Medicine, 3Internal Medicine, Yoka Hospital

キーワード :

【背景】
shear wave imagingは肝線維化診断に有用であるが,肝炎症・鬱血・黄疸等の影響を受けることが知られている.肝硬度が肝疾患診療の道しるべとなるのか検討を行った.
【検討内容・成績】
(1)線維化診断について:肝切除219例ではVTQ 1.82m/s以上のとき(AUROC 0.818,感度70%,特異度88%),針生検1220例ではVTQ 1.61m/s以上のとき(AUROC 0.874,感度81%,特異度85%)肝硬変と診断可能であった.HCV530例でF0-4を診断する重回帰分析を行うと,VTQ・年齢・血小板・AST・T-bil・FPG等を用いてR2=0.491,P<0.001の比較的精度の高い重回帰式が得られたが,実際の正答率は高くなく,肝硬変診断のAUROCはVTQ単独と同等であった.
(2)黄疸の影響について:減黄術が施行された閉塞性黄疸10例の検討では,多くの症例で減黄術後VTQが低下した.
(3)脾硬度を用いた静脈瘤診断について:190例では,脾臓VTQ 3.45m/s以上のとき治療を要する食道胃静脈瘤を診断可能であった(AUROC 0.894,感度87%,特異度83%).
(4)肝発癌予測について:1847例のコホート研究では,VTQ≧1.35 m/s,FPG>100mg/dl,male sex,age>61歳,PLT≦15.6万のとき肝発癌リスクが高く,頭文字を用いたVF map scoresに比例して累積肝発癌率が上昇した.
【考察】
多くの施設からVTQによる肝硬変診断の有用性が報告されているが,慢性肝炎の正確な線維化診断は困難と思われた.肝硬変の診断能に長けた理由として,肝内血流の動脈化,強い炎症の合併,門脈圧亢進症の合併などが寄与している可能性がある.また,黄疸・高度な炎症がある場合には肝硬度が上昇するため注意を要する.VTQは肝硬変診断能が高く,脾臓の硬度を用いれば食道胃静脈瘤のリスク評価が可能で内視鏡検査への橋渡しの一助となる.一方,VTQで慢性肝炎と診断された症例では,正確な線維化診断ができなくとも,VF map scoresを用いた肝発癌リスクの評価が可能であり,肝硬変症例と合わせて慎重なHCCスクリーニングの対象とすることもできる.今後は,このような診療プロトコールを用いて肝硬変の合併症検索,肝癌の早期発見が可能となり,肝疾患関連死の減少につながるかを検討していくことが重要と考える.
【結語】
VTQは線維化以外の影響も受けるが,肝硬変の診断能には一定のエビデンスが蓄積されている.肝発癌リスクの評価も可能であり,内視鏡治療やHCCスクリーニングへの橋渡しになりうる可能性を秘めた機種であると考えられた.