Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

特別プログラム 消化器
ワークショップ 消化器4 肝臓の硬さ診断:その精度と使途

(S297)

Real-time Tissue Elastography

矢田 典久, 工藤 正俊

Norihisa YADA, Masatoshi KUDO

近畿大学医学部消化器内科

Department of Gastroenterology and Hepatology, Kinki University Faculty of Medicine

キーワード :

Real-time Tissue Elastography(RTE)は,剪断弾性波の伝播速度を測定するShear wave imagingとは異なり,外力による肝組織の相対的歪み(ひずみ)を画像化する装置でStrain imagingに分類される.外力が一定の場合,軟らかい組織は硬い組織に比べて大きく変形する.RTEは,ROI(Region of Interest)内で相対的に歪が小さい部分(相対的に硬い部分)は青色,歪みが大きい部分(相対的に軟らかい部分)は赤色,中間色を緑色として256階調にリアルタイム表示できる装置である.乳腺・甲状腺・前立腺の悪性腫瘍が非腫瘍部に比し硬いことから,腫瘍の良悪の鑑別に有用であると報告されている.
肝線維化の観察時には,右肋間にプローブをそっと当て下大静脈による拍動により生じる肝組織の歪みをRTEで観察する.正常で線維化のない肝実質はほぼ緑一色になるが,ROIに血管が含まれると赤く表示される.また,肋骨や肺によるacoustic shadow,多重反射,ペネトレーション不足の場合には青く表示されてしまうため,これらのアーチファクトを避けて観察することが大切である.
C型慢性肝炎では,線維化が進行するとともに,画像のテクスチャが乱れ,相対的歪み量の小さな青い領域が漸増する.特徴量という画像解析パラメーターで解析すると,線維化が進行するとともに,MEAN(平均的歪みの平均値)は漸減,SD(歪みの平均値の標準偏差)は漸増,AREA(低歪み領域である青い領域の面積)は漸増といった具合に評価できる.現在,このような9種類の特徴量を総合的に判断し,客観的な肝線維化診断を目的として,C型慢性肝炎症例での肝生検診断を教師データとし,特徴量を用いて算出された重回帰式Liver Fibrosis Index(LFI)は,超音波装置の計測ツールで容易に計測できる.LFIは,肝線維化ステージの進行とともに漸増するが,LFIを用いたF4,≧F3,≧F2の線維化診断のAUROCは,それぞれ0.800,0.865,0.846と高値である.
RTEは3〜7MHzのリニアプローブEUP-L52を用いるため,皮下・内臓脂肪,肝内の脂肪が多い患者ではペネトレーション不足が生じ,同部が青く表示されるやすい.正しい診断を行うには,ペネトレーション不足にならないような工夫が必要であり,コツや慣れが必要である.最近,1〜5MHzのコンベックスプローブEUP-C715(ペネトレーション深度140mm以上)でも検査できるようになり,ペネトレーション不足が改善されるとともに,深部方向,左右方向へ観察可能領域が広がったため,適切な観察部位を選べるようになり診断能力の改善が図られた.
また,Shear wave imagingで測定する肝硬度は,肝線維化のほか炎症・黄疸・鬱血などの影響をうけるが,RTEは,炎症・黄疸・鬱血などの影響を受けない.よってStrain imagingとShear wave imagingを同時に測定することで炎症・黄疸・鬱血の程度を推測できる可能性がある.今後は,同一機器で両タイプのエラストグラフィが施行可能になる装置が,開発されつつある.