Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

特別プログラム 消化器
ワークショップ 消化器3 腹部悪性腫瘍の早期診断の限界と見逃してはいけない所見

(S294)

胆嚢癌の早期診断とその限界

Abdominal utrasound : Early diagnosis and its limit of gallbladder carcinoma

水口 安則

Yasunori MIZUGUCHI

国立がん研究センター中央病院放射線診断科

Dagnostic Radiology, National Cancer Center Hospital

キーワード :

非侵襲的な腹部超音波検査は,スクリーニング検査として,あるいは胆嚢癌を含む胆道系疾患を疑った場合に,最初に行うべき診断モダリティとして重要な位置を占めるのはいうまでもない.近年の超音波映像化技術の進歩は著しく,より高分解能でアーチファクトの少ない超音波画像が得られるようになり,小さな病変や,病変内のより細かな構造を描出することができるようになった.胆嚢超音波の場合,わずかな胆嚢内腔面の不整像の有無や,病変内の細かな構造,Rokitansky-Aschoff sinus(RAS)などの小さな嚢胞状成分などを明瞭に観察することができ,存在診断あるいは質的診断に役立っている.また,体外から行う超音波検査では,動的観察を診断に活用できる利点がある.動的観察とは,ただプローブをあててモニタに表示されるリアルタイム画像をそのまま観察するだけでなく,能動的にリアルタイム性を応用する手技である.すなわち,積極的な呼吸運動や心拍動性運動による病変自身の動きの有無,隆起性病変であれば首振り運動の有無や,病変に接する臓器との「ズレ」の有無,または,体位変換による病変自身の移動性・病変に接する臓器との位置関係の変化などを観察することである.これらは他のモダリティでは容易にまねのできない超音波ならではの手法であり,大いに活用すべきである.
早期胆嚢癌とは,組織学的深達度が粘膜内または固有筋層内にとどまるもので,リンパ節転移の有無は問わないとされている(胆道癌取扱い規約「第5版」).当院では,2009年2014年の期間中,腹部超音波施行後,切除された早期胆嚢癌症例を,9症例経験した.これらの症例のほとんど(6症例)は,けんしんを契機として発見された.年齢5577歳,男性4例,女性5例.肉眼型と深達度は,Ⅰp型 4病変(すべて深達度m),Ⅰs型 1病変(m),Ⅱa型 1病変(mp),RAS内の上皮内癌 3病変であった.これらの症例を中心に,胆嚢癌の早期診断とその限界,あるいは見落としてはいけない所見について述べたい.