畠 二郎¹, 今村 祐志¹, 眞部 紀明¹, 河合 良介¹, 小山 展子², 高田 珠子³, 中藤 流以⁴, 塚本 真知⁵, 山下 直人⁵, 春間 賢⁴

Jiro HATA¹, Hiroshi IMAMURA¹, Noriaki MANABE¹, Ryosuke KAWAI¹, Nobuko KOYAMA², Tamako TAKATA³, Rui NAKATOH⁴, Machi TSUKAMOTO⁵, Naohito YAMASHITA⁵, Ken HARUMA⁴

¹川崎医科大学検査診断学, ²川崎医科大学肝胆膵内科, ³三菱三原病院内科, ⁴川崎医科大学食道・胃腸内科, ⁵川崎医科大学総合臨床医学

¹Dept. of Endoscopy and Ultrasound, Kawasaki Medical School, ²Dept. of Hepatology and Pancreatology, Kawasaki Medical School, ³Dept. of Internal Medicine, Mitsubishi Mihara Hospital, ⁴Dept. of Gastroenterology, Kawasaki Medical School, ⁵Dept. of General Medicine, Kawasaki Medical School

キーワード :

【消化管壁の造影は可能か】
当然可能である．静注後1st passの動脈相における染影が最も強いが，数分間は評価可能な造影が得られる．本来消化管は薄い壁であることから，できるだけ高周波を使用することが望ましいが，減衰とのトレードオフになるため，被検者の体格と描出部位の深さ，さらには検査の目的を考慮して適宜周波数を決定する．造影剤の用量についても同様であるが，我々の施設では通常量（0.015 ml / kgBW）を用いることが多い．一般的に静注後10数秒から壁の染影が得られ，高周波で観察すると造影剤のマイクロバブルが粘膜層を循環している様子が観察される．
【造影超音波の利点】
同じ断層画像診断法であるCTと比較した場合，造影超音波は用いる造影剤の安全性が高く，腎障害を有する症例にも使用できる．次に造影剤の特性として間質に移行しないことは，循環障害の正確な評価に役立つ．さらに超音波の特性である高い空間分解能とリアルタイム性は造影超音波においても同様であり，他の追随を許さないものである．これらの特徴は，急性腹症の症例が多く，循環障害が一般的に診断困難とされ，高い分解能が要求される消化管領域において大きな武器となる．言い換えれば造影超音波に代替法はない．
【臨床的有用性】
腫瘍性疾患においては血流の多寡，血管の形態を評価することで鑑別診断に役立つ．また腫瘍内perfusionの評価は化学療法の治療効果判定に応用可能である．急性炎症では炎症の程度を推測することができ，IBD（炎症性腸疾患）に代表される慢性炎症性疾患では経過観察や治療効果判定に有用である．また他のmodalityでは診断が容易でないとされている絞扼性腸閉塞やNOMI（非閉塞性腸管虚血）の診断において，造影超音波は非常に有用である．また消化管内腔に希釈した造影剤を注入し粘膜面の形態を明瞭にしたり穿孔部位を同定するという管腔造影剤としての使用法もある．
【造影超音波の問題点】
ではそれほど有用な消化管の造影超音波が何故普及していないのか？保険適用外の薬剤であっても患者の診療に必要で代替法がなければ臨床医はその使用をさほど躊躇はしないものであり，保険適用に関しては単にマイナーな理由の一つに過ぎない．消化管を造影するには前提として消化管が同定できることが必要であるが，現時点では実際に患者の診療に従事する消化器専門医の消化管超音波に対する認識が低いことが最大の原因である．また超音波特有の欠点である被検者の体格により画像が影響を受ける点も普遍性を確保する上での障害となる．
【造影超音波は消化管疾患に必要か？】
本ワークショップのタイトルであるが，それに対する回答は言うまでもない．たとえ本ワークショップで不要と結論付けられても，少なくとも我々の施設では今後も施行し続けるであろう．特に急性腹症の診断においては不可欠の手法であることは断言できる．あれもこれもと絨毯爆撃のような検査を行わなくても，造影超音波で多くの疾患はスマートに診断可能である．