Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

特別プログラム 消化器
パネルディスカッション 消化器3 適切なRFAのsafety marginとは?

(S285)

肝細胞癌に対するラジオ波焼灼療法後の局所再発に寄与する因子と適切なsafety margin

Local recurrences after percutaneous radiofrequency ablation of hepatocellular carcinoma: analysis focused on tumor locations and safety margin

中村 進一郎1, 能祖 一裕1, 大西 秀樹1, 桑木 健志1, 竹内 康人1, 白羽 英則1, 歳森 淳一1, 萩原 宏明2, 小林 功幸3, 山本 和秀1

Shinichiro NAKAMURA1, Kazuhiro NOUSO1, Hideki ONISHI1, Kenji KUWAKI1, Yasuto TAKEUCHI1, Hidenori SHIRAHA1, Junichi TOSHIMORI1, Hiroaki HAGIHARA2, Yoshiyuki KOBAYASHI3, Kazuhide YAMAMOTO1

1岡山大学大学院医歯薬学総合研究科消化器・肝臓内科学, 2住友別子病院内科, 3東京医科大学病院消化器内科

1Department of Gastroenterology and Hepatology, Okayama University Graduate School of Medicine, Dentistry and Pharmaceutical Sciences, 2Internal Medicine, Sumitomo Besshi Hospital, 3Department of Gastroenterology, Tokyo Medical University Hospital

キーワード :

【目的】
肝細胞癌(HCC)に対するラジオ波焼灼療法(RFA)後の局所再発に寄与する因子を明らかにするため,腫瘍因子と局在,治療後のsafety margin(SM)の観点から解析した.
【対象】
当科で2001年から2011年に初発HCCと診断された849例中,初回治療としてRFAを施行した397例を対象とした.この全例について,初発および再発を含めて観察期間中にRFAを行ったすべての結節;計1455結節を対象とした.
【方法】
HCCの診断は,103例は生検にて行い,残る294例はdynamic CT or MRI,造影USにて動脈有意相で早期濃染し門脈優位相で洗い出しを認める典型的な画像所見で診断した.多血性のHCCは1cm前後の小さな結節をのぞいて,基本的にRFAに先行して肝動脈化学塞栓術(TACE)を行った.RFAは全例Cool-tip RFA systemを使用し,術後3-5日後にdynamic CT or MRIで治療効果を判定した.腫瘍の残存が疑われた場合は術後7日目に追加焼灼を行った.SMは,門脈優位相のaxial view,coronal viewで腫瘍の最大割面を表示して測定した.腫瘍の辺縁と焼灼による不染域の境界との距離で最も短い部位を計測(ミリメートル単位)し,小数点以下を切り捨ててSMとした.腫瘍が脈管と接している場合は焼灼域が脈管を超えて拡がっているかどうかにかかわらず,SM 0 mmと判定した.
SM 3mm未満,3mm以上5mm未満,5mm以上の3群に分けて,Kaplan-Meyer法を用いて局所再発率を比較しログランク検定を行った.さらに局所再発率に寄与する因子について,SMの他,腫瘍径,多血性or乏血性,先行TACEの有無,腫瘍形態,結節に近接する臓器・組織の種類(横隔膜,門脈,肝静脈,下大静脈,胆嚢,胃,腸管,膵臓など)を危険因子としてCox比例ハザードモデルを用いて多変量解析を行った.
【結果】
397例の生存率は1年97.4%,3年85.3%,5年70.1%,1455結節の局所再発率は1年2.2%,3年7.4%,5年9.5%であった.SMが3mm未満,3mm以上5mm未満,5mm以上の結節の割合は40%,29%,31%で,局所再発率はそれぞれ1年3.2%,2.0%,1.0%,3年12.8%,5.4%,2.3%,5年15.6%,7.1%,3.9%で有意に差がみられた(P<0.0001).局所再発率に寄与する因子として,単変量解析では腫瘍径>20mm,門脈1次分枝or 2次分枝に近接,肝静脈に近接,SM 3mm未満の4つの因子が抽出され,多変量解析ではこれらすべての因子が有意でそれぞれリスク比(95%信頼区間,P値)は1.85(1.16-2.86,P=0.011),2.93(1.79-4.64,P<0.0001),1.90(1.18-2.95,P=0.0082),2.24(1.50-3.40,P<0.0001)であった.多血性か否かは単変量でリスク比1.56(95%信頼区間1.00-2.55,P=0.052)で有意な因子ではなかった.
【結論】
SM 3mm未満は腫瘍径,脈管近接の有無とならび局所再発の因子として重要であった.