Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

特別プログラム 消化器
パネルディスカッション 消化器2 びまん性肝疾患の超音波診断

(S282)

Sonazoid®造影超音波を用いたびまん性肝疾患の検討

Evaluation of the liver diseases using contrast-enhanced ultrasound with Sonazoid®

松清 靖, 和久井 紀貴, 住野 泰清

Yasushi MATSUKIYO, Noritaka WAKUI, Yasukiyo SUMINO

東邦大学医療センター大森病院消化器内科

Division of Gastroenterology and Hepatlogy, Toho University Omori Medical Center

キーワード :

【はじめに】
我々はびまん性肝疾患に対してsonazoid®造影剤超音波を施行し,慢性肝疾患においては,肝実質灌流と病態および病期進展の関連を,急性肝炎では,血流の変化が病態や予後に関連するか否かを検討してきた.今回はそれらの最新の成績を示す.
【対象および方法】
C型慢性肝疾患:2012年10月〜2014年12月に肝生検,造影超音波を行ったC型肝炎73例(F1:6 F2:23 F3:14)と,臨床的に診断したC型肝硬変50例.
急性肝炎:48例.内訳はA型急性肝炎7例,B型急性肝炎41例
造影超音波:検査は早朝空腹時に,体位は仰臥位,装置は東芝社製AplioXG,探触子は3.75MHzコンベックス型を使用して行った.まず一般的なBモード検査で肝臓の全体像を把握し,引き続き造影超音波検査を施行.推奨量の超音波造影剤Sonazoid®を肘静脈からボーラス静注し,右肋間走査で肝S5領域と門脈右枝を同一画面上に描出して30秒間動画記録した.その動画からまず肝実質,肝動脈および門脈のtime−intensity curve(以下TIC)を作成.次いで装置にインストールされたアプリケーションを用いてarrival−time parametric imageを作成し,それを門脈右枝arrival-timeを基準として,それより早く染影されたピクセルを赤,後に染影されたピクセルを青に色分けした.すなわち赤が動脈由来の染影,青が門脈由来の染影となり,実質灌流の由来血流を同定できる.それ故,できあがった画像を我々はPerfusion Parametric Image(以下PerfusionPI)と呼称している.さらに,動脈化の割合を定量化するためにPixCountというソフトを用いてArterialization Ratio(以下AR)を算出した.ARの算出方法は,Perfusion-PIから肝を切り抜き,PixCountに読み込む.その後,肝をROIで囲み,ROI内の赤と青のピクセル数をカウントし,肝全体のピクセル数に対する赤色のピクセル数の割合をAR%とし算出した.つまり,ARは高ければ高いほど動脈化しているということになる.
【結果】
C型慢性肝炎:ARの検討から,線維化ステージを詳細に分別することは困難であったが,本来の意味での動脈化は主にF4症例で認められることが判明した.
急性肝炎:急性期と回復過程のARを比較した結果,急性期と比べ回復過程では有意にARは低下していた.すなわち急性期には肝実質灌流は動脈化しており,回復過程で門脈優位へと回復していることが判明した.なおALTが改善してもARが高値にとどまっている,つまり動脈化が続いている症例では機能障害が遷延した.
【考察】
本来正常肝は富栄養性の定常流である門脈で栄養され,低栄養拍動流である動脈は胆道系を栄養するとされている.慢性肝炎F4では,病変進展に伴う門脈血流の減少を代償するかたちで肝実質灌流の動脈化が起こるが,これは栄養学的に極めて不利であると同時に,類洞圧の上昇を来たすため,門脈圧亢進症などに対しても不利に働く可能性が高い.一方急性肝炎では,多くの症例が速やかに改善するが,中には病態が遷延する症例も見られ,そのような症例は動脈化も遷延している.急性肝炎の動脈化は門脈血流低下により惹起されるものではなく,おそらくは肝臓の炎症に伴うサイトカインに由来するものと考えているが,それが遷延するということは,炎症の持続を意味しており,それゆえに重症化の危険性を示唆するものと考える.
【結語】
肝実質灌流動態の解析は,病態把握に有用である.