今井 康晴¹, 平良 淳一¹, 竹内 啓人², 小川 紗織², 安藤 真弓², 佐野 隆友², 杉本 勝俊², 森安 史典²

Yasuharu IMAI¹, Jun-ichi TAIRA¹, Hirohito TAKEUCHI², Saori OGAWA², Mayumi ANDO², Takatomo SANO², Katsutoshi SUGIMOTO², Fuminori MORIYASU²

¹東京医科大学八王子医療センター消化器内科, ²東京医科大学消化器内科

¹Department of Gastroenterology and Hepatology, Tokyo Medical University Hachioji Medical Center, ²Department of Gastroenterology and Hepatology, Tokyo Medical University

キーワード :

【目的】
近年，超音波を用いた組織弾性率の測定が普及しつつある．測定方法としては，組織を圧迫することにより生じた「ひずみ」を相対的にカラー表示して画像化するstrain elastographyと組織の圧迫により生じた「せん断波」の速度を測定して弾性率を求めるshear wave elastographyの2つがある．技術開発に伴ってSupersonic imagine社製超音波装置Aixplorerによりshear wave elastographyにおいても，得られた組織弾性率をリアルタイムに超音波Bモード画像上にカラー表示することが可能となった（real-time color mapping shear wave elastography）．今回，びまん性肝疾患におけるElastographyの有用性についてAixplorerに搭載されたreal-time color mapping shear wave elastographyであるShearWave Elastography（SWE）を用いて我々が測定した肝組織弾性率の成績および文献より考察した．
【対象と方法】
慢性肝疾患23例，急性肝炎22例，C型慢性肝炎インターフェロン療法著効（SVR）42例についてAixplorerに搭載されたSWEを用いて肝組織弾性率を測定した．測定方法は，右肋間走査で関心領域を肝表面より約1cm深部の肺，消化管，Glisson梢によるartifactの影響がない部位に設定し，カラー表示が均一に描出された部分を測定領域とした．同一部位で3回測定し，その平均値を求めた．
【結果と考察】
（1）慢性肝疾患では，臨床的に肝硬変と診断された症例で有意に弾性率が高かったが，関心領域内の標準偏差値には有意差を認めなかった．弾性率は年齢，血小板，血清アルブミン，コリンエステラーゼ，総コレステロール値と相関していた．（2）急性肝炎のうち，重症肝炎，劇症肝炎では弾性率が高い症例を認めた．弾性率はプロトロンビン時間，血清アルブミン値と相関していた．（3）SVR症例では，HCCを合併している症例で弾性率が高かった．組織学的に肝硬変であっても弾性率が低い症例が見られた．（4）SWEは，弾性率のカラー表示により検査中に適切に測定できているかについて判断が可能であり，さらに適切に測定されている部分を認識しながら弾性率を得ることが可能である．そのため，測定値のばらつきが少ないと考えられる．（5）SWEが肝線維化以外の要因，特に粘性にも影響されることを利用して，肝機能重症度診断にも応用される可能性がある．（6）Elastographyにおける定量性，客観性を考えた場合，単に数字が示されるだけではなく，その測定が正しく行われたものであることを示す画像が残されることが必要と考える．
【結語】
real-time color mapping shear wave elastographyは，より高い精度で肝臓の弾性率を測定できる可能性がある．さらに，肝線維化診断だけでなく，肝機能重症度診断にも応用され得ると考えられる．