Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

特別プログラム 消化器
パネルディスカッション 消化器2 びまん性肝疾患の超音波診断

(S281)

血管構造によるびまん性肝疾患の診断

Diagnosing the liver diseases by using the parenchymal vasculature findings

丸山 憲一1, 工藤 岳秀1, 松清 靖2, 和久井 紀貴2, 住野 泰清2

Ken-ichi MARUYAMA1, Takahide KUDOU1, Yasushi MATSUKIYO2, Noritaka WAKUI2, Yasukiyo SUMINO2

1東邦大学医療センター大森病院臨床生理機能検査部, 2東邦大学医療センター大森病院消化器内科

1Department of Clinical Functional Phisiology, Toho University Omori Medical Center, 2Gastroenterology and Hepatology, Toho University Omori Medical Center

キーワード :

【はじめに】
肝疾患の診察には,肝組織所見や肝機能検査,逸脱酵素,ウイルスマーカーといった多くの情報が必要とはなるが,それらのなかでも形態情報は診断の基本となる.形態,つまり組織が変化すると,血管・血流にも影響を及ぼすため,超音波検査で血管・血流を観察することは,肝疾患の診断に役立つ情報が得られると考えられる.肝臓は動脈と門脈といった2系統の栄養血管から大量の血液供給を受け,代謝の中枢としての働きを担っている.それ故に肝疾患があると血流は大きく影響を受け,病変の進展に伴ってさまざまに変化する.肝実質内血管の形態も慢性肝炎から肝硬変へと病期が進行するにつれ,組織の壊死・炎症・瘢痕・萎縮を反映して変化をきたす.具体的には進行した慢性肝炎では炎症により血管の増生がおこりまた,血管の間の組織が壊死,瘢痕化して縮小することで分岐した血管が近づき,単位面積当たりの血管が増加する.さらに肝硬変では組織の瘢痕化,萎縮が進み血管が強く屈曲蛇行(cork-screw pattern)していく.以上を踏まえ我々は,びまん性肝疾患の病態把握と診断を目的とし,種々ドプラ法を用いて肝臓表面近傍の血管を観察し,造影超音波検査を用いて肝臓実質の血流動態を検討してきた.今回は慢性肝疾患における肝表面近傍血管の変化①単位体積あたりの血管数増加,②分岐角度の変化,③屈曲蛇行等,形態の不整化につき詳細お示しする.
【対象・方法】
急性肝炎(27例),慢性肝炎(49例),肝硬変(28例),脂肪肝(10例),健常対象(20例)の計134例.超音波装置は東芝社製のAplio XGとAplio 500,探触子は高周波リニア型PLT-704SBTを用い,ADF(Advanced dynamic flow),SMI(Superb Micro-vascular Imaging)各モードで検査を行い肝表面から深さ2cmの実質内血管の観察を行った.
【結果】
①正常肝と脂肪肝の比較
脂肪肝は正常肝に比べ,末梢の血管が見えにくい傾向にあった.
②正常肝と慢性肝炎の比較
慢性肝炎は正常肝と比べ,画像的に明らかな変化は認めなかったが,慢性肝炎の中でALT200以上で肝表面の細かい血管が目立つ傾向であった.
③肝硬変
肝硬変では健常者や慢性肝炎に比べ血管は多数描出され,またその血管は細く,不整であった.PT70%以下の症例ではさらにシャント様血管も描出され,特にSI(spleen index)=30以上の症例ではそれが顕著であった.
④急性肝炎
急性肝炎では急性期には肝表面直下まで微細かつ密な血管を描出でき,かつ末梢におけるシャント様の不整血管も観察された.回復期ではこれらの所見は見られなくなり,観察可能な血管も減少した.
【まとめ】
肝表面近傍の血管を検討することで,さまざまな病態を理解できる可能性が示唆されたが,ADFは感度の関係で,末梢血管をきれいに描出することが難しいことも多かった.しかし,ADFの進化版ともいえるSMIが使用可能となり,この問題点が大幅に改善され,フレームレートと低流速感度の大幅な向上により,血管の連続性がさらに明瞭となり,より細かな血管像が観察可能となった.