Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

特別プログラム 消化器
パネルディスカッション 消化器2 びまん性肝疾患の超音波診断

(S280)

びまん性肝疾患における超音波画像の特徴とPitfall

Fortes and Pitfalls of Ultrasound for Diagnostics of Chronic Liver Disease

神山 直久

Naohisa KAMIYAMA

GEヘルスケア・ジャパン株式会社超音波研究開発部

Ultrasound Division, GE Healthcare

キーワード :

【はじめに】
超音波診断は主に軟部組織の形状や動態の観察に利用されるが,超音波受信信号(以下エコー信号)は生体組織の局所的な音速や密度等の物理量を敏感に反映し,脂肪化,線維化に関する早期診断ツールとしてのポテンシャルもある.そのため,これらの微細な変化を表現可能な映像法や定量解析に関する,多くの研究がなされている.今回,びまん性肝疾患を定量化する際のエコー信号の特長や注意点についてキーワードを掲げ概説する.
スペックルパタン:
スペックルパタンは,音波の干渉で生じたノイズか,構造物を反映した情報であるかの識別が困難なことがあるが,これらはエコー信号振幅の統計情報を用いて分別できる.これを利用することで線維化量を定量化できる報告がある[1].またこのような分離はセグメンテーションの精度向上にも利用することができる[2]
【Raw data】
組織性診断を試みる際には,RF信号ベースか少なくとも走査線毎の振幅情報(Raw data)を用いるべきである.なぜなら,最終的に提示される画像には,通常様々な画像処理がなされており,そのままでは超音波の物理情報が欠損あるいは歪曲されるからである.ただし,診断装置の画像フィルタ等の後処理のパラメータを全てOFFにすれば,振幅情報に比較的類似した信号値として暫定的に利用できる場合がある.
【エコー信号強度】
エコー信号強度の絶対値は多くの場合定量化に不向きである.送信音圧は装置上の種々の設定値(周波数はもちろん,focus深度や最大深度の変更)によって変動するが,この変化を目立たなくするようゲイン補正が内部で細かく実行されているからである.
エコー信号強度の相対的な比較は有効であることが多い.ただしこの場合,グレーレベル(階調)は表示dynamic range値を使って正確なデシベル値に変換する必要がある.デシベル値からリニア信号への変換は,表示マップのガンマカーブ等の情報が必要な場合が多い.それゆえに,正確なリニア信号情報を得る必要がある場合は,画像から単純なanti-log演算を行うよりは装置開発側が保証したツール等を利用した方が良い.
【テクスチャ解析】
多くの一般的な画像解析アルゴリズムは,画像の物理現象を読み取ることを目的としないため,使用する際には超音波画像に適用するための咀嚼が必須である.これは具体的には,ある画像解析パラメータ(の変化)が,超音波のどんな物理現象に対応するかの理解であり,またそれが組織性状の変化に対してどう関与するかの理論的考察である.これらを無視した表面的な画像分析は超音波の本質的長所を活かしきれないことがある.
筆者等が肝組織性状解析に用いている同時生起行列(GLCM)を用いた手法[3]は,汎用的なテクスチャ解析の一種である.テクスチャを特徴づけるパラメータは14種類もあるが,超音波画像の物理的特徴を踏まえて考察すると,本質的に有用なのは3種類程度であることが分かった[4].またこの解析は走査線に沿ったRaw data解析であり,画像解析と元信号解析を融合させたアプローチとなっている.
【文献】
[1]Yamaguchi, Hachiya et al. JJAP, 40(5B),3900-3904(2001.5).
[2]Slabaugh, Unal et al. J Ultras Med & Biol. 35(5 781-795(2009).
[3]田中,五十嵐他.J Med Ultrasonics 37(Suppl.)S325(2010).
[4]野口,神山他.87th日超医41,87-基-027,S477(Suppl.)