Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

特別プログラム 消化器
パネルディスカッション 消化器1 超音波による放射線治療・化学療法の効果判定

(S278)

多血性HCCに対する体幹部定位放射線治療の効果判定に関する検討

Evaluation of therapeutic effectiveness of Stereotactic Body Radiation Therapy for hypervascular hepatocellular carcinoma

沼田 和司1, 二本松 宏美1, 羽尾 義輝1, 道端 信貴1, 近藤 正晃1, 中馬 誠1, 田中 克明1, 前田 愼2, 佐貫 直子3, 武田 篤也3

Kazushi NUMATA1, Hiromi NIHONMATSU1, Yoshinori HAO1, Nobutaka DOUBA1, Masaaki KONDO1, Makoto CHYUMA1, Katsuaki TANAKA1, Shin MAEDA2, Naoko SANUKI3, Atsuya TAKEDA3

1横浜市立大学附属市民総合医療センター消化器病センター, 2横浜市立大学大学院医学研究科消化器内科学, 3大船中央病院放射線治療センター

1Gastroenterological Center, Yokohama City University Medical Center, 2Gastroenterological Department, Yokohama City University, 3Radiation Oncology, Ofuna Chuo Hospital

キーワード :

【はじめに】
肝細胞癌(以下HCC)の完全壊死を狙える保険診療内治療として肝切除,ラジオ波以外に体幹部定位放射線治療(Stereotactic Body Radiation Therapy以下SBRT)がある.これは体幹部の限局した小腫瘍に対して,局所制御の向上と周囲臓器への有害事象の低減を目的に,多方向から照射する技術と照射する放射線を病変に正確に照準する技術の両者を満たすものであり,従来の放射線治療よりも大線量を短期間に照射することを目的にした治療である.HCCに対するSBRTの適応基準は以下の6つ.1)根治目的,2)手術困難もしくは拒否,3)解剖学的にRFA困難,4)Child-Pugh A or B,5)腫瘍最大径4cm以下の単発腫瘍,6)胃十二指腸から原則約2cm離れている.Sanukiらの報告(AJR 2013; 201: W812)では多血性HCC 42例(平均腫瘍径21mm)のSBRT後の造影CTでの効果判定では完全壊死になるまでの期間中央値:5.9(1.2-34.2)ヶ月,最終CR率:93%(39/42),2年後にenhanceが残存する腫瘤は3例あると報告している.放射線の影響でしばらくは腫瘍周囲に多血化が消失しないため,治療の効果判定まで時間を要する.今回われわれはの多血性HCCに対するSBRT治療効果判定について検討した.
【対象および方法】
2013年3月から14年9月にSBRTを施行した多血性HCC 22例22結節(平均21mm, 12-40mm)である.うち2結節(16 mmと38mm)は腹膜播種である.年齢50-85歳.いずれもChild-Pugh A or B,切除不可能もしくは希望がなく,かつRFA困難な症例である.処方線量:最大線量の70%isodose lineで規定.原則Child-Pugh A 40 Gy/5fr, Child-Pugh B 35 Gy/5fr(腫瘍サイズと肝容量の関係が制限を超えた場合は5Gy減量).前半の14症例は造影CTもしくは造影EOBMRIが施行できないものは造影超音波でのみ経過を観察し,それ以外は造影CTまたはEOBMRIと造影超音波で経過を観察した.後半の8症例はSBRT 1,4,7,11か月後に造影EOBMRIと造影超音波を同時期に施行し,放射線によるFocal liver reactionの範囲と腫瘍の治療効果判定について比較検討した.
【結果】
14例中13例は3-4か月以降次第に腫瘍が縮小していき,腫瘍内部の血流が減少しCRと判定.38mm腹膜播種1例は消化管近傍部位が増大し残存と判定.Focal liver reactionの範囲はSBRT後1-3か月以降にEOBMRI肝細胞相でlow signalに,3か月以降の造影超音波後血管相で陰影欠損として描出された.SBRT後1か月で造影CT動脈相では腫瘍とその周囲は多血だが,造影超音波動脈相で腫瘍濃染のみの血流低下が認識可能.造影超音波後血管相でのre-injectionで既存の動脈,門脈血流の観察,腫瘍血流の多寡の有無を観察しやすかった.後半の8症例は造影EOBMRI,造影超音波後血管相でSBRT後同時期にFocal liver reactionの範囲を描出可能であった.腫瘍サイズの増大なく,腫瘍の血流低下を認め効果ありと考えているが,現時点では観察期間が短いためさらなる経過観察が必要.
【考察】
SanukiらはFocal liver reactionの範囲の同定にはEOBMRI肝細胞相が有効と報告している(IJROBP 2014; 88: 306).高度肝硬変ではEOBMRI肝細胞相が不明瞭になるという欠点があり,一方,SBRT実施症例は穿刺j困難な横隔膜近傍病変が多く,造影超音波での評価が部位的に難しいという欠点がある.
【結論】
多血性HCCのSBRT後は原則腫瘍サイズが次第に縮小すれば効果ありと判定可能.腫瘍血流の減少には,造影CTよりも造影超音波が鋭敏であり,Focal liver reactionの範囲はEOBMRI肝細胞相と造影超音波の後血管相がともに認識可能だが,EOBMRI肝細胞相が早く認識可能の傾向にある.症例の積み重ねと長期の経過観察が必要.