塩澤 一恵¹, 渡邉 学¹, 池原 孝¹, 大久保 雄介², 牧野 博之², 塚本 信宏³, 工藤 岳秀⁴, 丸山 憲一⁴, 五十嵐 良典¹, 住野 泰清¹

Kazue SHIOZAWA¹, Manabu WATANABE¹, Takashi IKEHARA¹, Yusuke OKUBO², Hiroyuki MAKINO², Nobuhiro TSUKAMOTO³, Takahide KUDO⁴, Kenichi MARUYAMA⁴, Yoshinori IGARASHI¹, Yasukiyo SUMINO¹

¹東邦大学医療センター大森病院消化器内科, ²済生会横浜市東部病院消化器内科, ³済生会横浜市東部病院放射線治療科, ⁴東邦大学医療センター大森病院臨床生理機能検査部

¹Division of Gastroenterology and Hepatology, Department of Internal Medicine, Toho University Medical Center, Omori Hospital, ²Division of Gastroenterology and Hepatology, Department of Internal Medicine, Saiseikai Yokohamashi Tobu Hospital, ³Department of Radiology, Saiseikai Yokohamashi Tobu Hospital, ⁴Department of Clinical Functional Physiology, Toho University Medical Center, Omori Hospital

キーワード :

【目的】
サイバーナイフ（Cyber Knife: CK）はコンピューター制御のロボットアームに高線量照射が可能な放射線照射装置を装着した定位放射線治療装置で，病変部へのピンポイント照射が可能で，肝細胞癌（HCC）に対する新たな局所治療の一つとして期待されている．当院では2011年12月からHCCに対してCKを導入し，治療効果判定には主にdynamic CTが用いられているが，治療半年以降に効果が現れる症例も多く，早期治療効果判定方法の確立が望まれる．今回，ソナゾイド^®造影超音波（CEUS）をCK前後で施行し，その画像変化について検討した．
【方法】
対象は当院でCKが施行され，dynamic CTにて治療効果が確認でき，治療前後にCEUSによる画像解析が行なわれたHCC6例．男性5例，女性1例，平均年齢77.5歳，HCV5例，アルコール1例，平均腫瘍径は24.7mm，平均総照射線量は48.3Gy（3-5分割）．CK前，治療2週後，4週後，以後可能な限り4週毎にCEUSを施行し，dynamic CTで治療効果（RECICLによるCR判定）が得られた時点でCEUSによる評価を終了とした．東芝社製AplioXG，3.75MHZコンベックスプローブを使用，ソナゾイド^®を左肘静脈から0.5mlボーラス静注し，血管相で腫瘍部と腫瘍周囲肝実質の染影動態を，後血管相で腫瘍周囲肝実質のdefectの有無を評価した．その後，re-injection methodにより再度腫瘍部と腫瘍周囲肝実質の血管相における染影動態を確認し，治療前後で比較検討した．本検討は病院倫理委員会の承認を得ている．
【結果】
腫瘍内部の染影は早い症例で4週後，遅い症例で40週後に低下を認めた．腫瘍周囲肝実質については早い症例で2週後，遅い症例で12週後に強い染影が出現し，その後いずれの症例においても同部位は後血管相でdefectを呈した．腫瘍部と腫瘍周囲肝実質の染影動態の変化出現時期は症例によりさまざまで一定の傾向はなかった．
【考察】
各症例における治療後の変化出現時期の相違は腫瘍径や腫瘍部位，総照射線量，患者背景などの違いが影響していると思われた．腫瘍内部の染影動態については，時期に差はみられるものの全例で染影低下を認め，治療効果を表していると考えられた．腫瘍周囲肝実質については，全例でまず初めに血管相で強い染影が出現し，その後，後血管相で同部はdefectを呈した．この所見は放射線性肝障害を表している可能性がある．肝静脈枝は動脈枝や門脈枝と異なり，グリソン鞘がないため血管内皮に障害を受けやすいと考えられ，そのため放射線照射後にveno-occlusive diseaseと類似した状態となり，肝実質のうっ血や静脈枝の障害が起こり，A-Pシャントの形成を認め，本検討のように強い染影となって現れ，さらにその後，クッパー細胞の障害による機能低下が起こり，後血管相で染影部はdefectを呈したと推察された．
【結語】
腫瘍周囲肝実質にみられた強い染影は照射野に一致している可能性があり，治療後早期にこの所見がみられた場合は，腫瘍部に十分な照射が行なわれていることを表している可能性がある．少数例の検討ではあるが，CKにおけるCEUSによる腫瘍および腫瘍周囲肝実質の血流動態の評価は，比較的早い段階での治療効果判定に応用できる可能性が示唆された．