Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

特別プログラム 消化器
パネルディスカッション 消化器1 超音波による放射線治療・化学療法の効果判定

(S277)

当院での進行肝細胞癌に対するソラフェニブ治療における造影超音波検査の現状と役割

Evaluation of sorafenib treatment response by contrast enhanced ultrasonography for advanced HCC patients

葛谷 貞二, 石上 雅敏, 石津 洋二, 本多 隆, 林 和彦, 石川 哲也, 後藤 秀実

Teiji KUZUYA, Masatoshi ISHIGAMI, Youji ISHIZU, Takashi HONDA, Kazuhiko HAYASHI, Tetsuya ISHIKAWA, Hidemi GOTO

名古屋大学消化器内科

Department of Gastroenterology and Hepatology, Nagoya University

キーワード :

【目的】
進行肝細胞癌に対するソラフェニブの治療効果を判定する際,画像上の阻血性変化(腫瘍濃染の減弱や消失)は重要とされる.当院ではソラフェニブの治療効果判定は原則,造影CT検査で評価している.また,ソラフェニブ投与後早期の臨床的変化に着目した検討を行っており,造影CT検査をソラフェニブ投与2週間後に撮像し阻血性変化の有無を評価している.当院のソラフェニブ治療の状況下における造影超音波検査(CEUS)の現状と役割について検討する.
【対象と方法】
2011年6月から当院にてソラフェニブを導入した進行肝細胞癌患者は127例であった.2週間後の画像評価として造影CT検査の代わりにCEUSのみで治療効果判定を行った症例は1例であった(慢性腎機能障害のため.病変総数は2か所でいずれも造影超音波検査で評価可能であった).ソラフェニブ投与後に,造影CT検査に加えて,CEUSでも阻血性変化を評価した症例は6例であった.阻血性変化が得られた症例のうち,造影CT検査で広範囲に腫瘍濃染の消失(=腫瘍壊死と考えられる程度の阻血性変化)が得られたと判定した結節においても,CEUSにて血管相早期・後期に血流シグナルおよび腫瘍濃染が認められた結節もあった.また,継時的にCEUSを施行した症例で,CEUSの方が造影CT検査よりも鋭敏に阻血性変化の評価が可能であった症例があった.
【結論】
現状における当院のソラフェニブ治療におけるCEUSの役割は,造影CT検査でみられた阻血性変化の精査(腫瘍濃染の消失か減弱かの区別)としてであった.それらの症例の中にはCEUSの方が造影CT検査よりも阻血性変化の評価として鋭敏であったと考えられた症例も経験した.しかし,ソラフェニブの治療対象となる症例の多くは多発病変であること,また遠隔転移の評価も必要であることを考慮すると,CEUSのみでの評価では限界があると考えられた.ソラフェニブ治療においては,現状のように造影CT検査による治療効果判定を原則とし,必要に応じてCEUSによる評価を組み合わせるのが良いと考えられた.