Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

特別プログラム 消化器
シンポジウム 消化器4 腹部検(健)診判定マニュアル導入の壁vs導入事例 (消化器がん検診学会共同企画)

(S274)

カテゴリー分類の有用性と導入後の課題(肝疾患を中心に)

Usefulness and problems after introduce the categorized criteria for ultrasonographic cancer screening

原田 和歌子1, 脇 浩司2, 辻 恵二2

Wakako HARADA1, Kouji WAKI2, Keiji TSUJI2

1広島市立安佐市民病院総合診療科, 2広島市立安佐市民病院消化器内科

1Department of General Internal Medicine, Hiroshima City Hospital, 2Department of Gastroentrology, Hiroshima City Hospital

キーワード :

【目的】
当院では腹部超音波健診は主に技師が施行しており,腹部臓器の早期診断に寄与している.一方で腹部所見のアセスメントは標準化しておらず,それゆえ客観的な精度の評価は困難であった.そこで当院では癌に対する判定基準の標準化を図るため,2012年8月よりカテゴリー分類を導入した.その後の事後指導,実際の診断結果をふまえ,カテゴリー判定の有用性と導入後の課題について肝疾患を中心に検討したので報告する.
【対象】
2012年8月〜2014年11月まで当院で検診超音波が施行された1368例(男性909例,女性459例,平均年齢52.5±11.1歳)を対象とした.
【成績】
カテゴリー分類(C)の臓器別カテゴリー内訳は,肝C0 0.01%,C1 48.2%,C2 44.2%,C3 5.4%,C4 0.7%,C5 0.0%,胆道C0 0%,C1 66.5%,C2 25.9%,C3 5.3%,C4 0.5%,C5 0.0%,膵臓C0 0%,C1 91.8%,C2 0.5%,C3 1.7%,C4 0.2%,C5 0%,腎臓C0 0%,C1 61.0%,C2 36.0%,C3 1.2%,C4 0.2%,C5 0%,脾臓C0 1.1%,C1 91.7%,C2 0.5%,C3 2.9%,C4 0%,C5 0%であった.要精検をC3-5と仮定すると肝臓5.0%(84例)でその内訳は,高エコーSOL(血管腫疑い)が39例,うち28例を超音波検査フォロー,11例を精検対象とした.他,12例慢性肝障害,13例脂肪肝,17例は胆管過誤腫等いずれも精密検査を要さなかった.C4 4例の内訳は2例が低〜高エコーSOLで多発血管腫と診断,1例は辺縁不整な高エコーSOLで未受診,1例はモザイク様充実性腫瘤で肝細胞癌と診断された.
【まとめ】
当院の受験者のほとんどが非B非C肝機能正常例であった.カテゴリー3所見では情報収集が精検対象の洗い出しに有用であり,充実性病変においては血管腫に特異的な所見・初回の指摘・定期的な通院の有無,慢性肝障害パターン所見においては通院歴の有無,肝内胆管拡張所見については胆のう切除術の有無といった項目が重要と考えられた.また1年毎にカテゴリー分類の精度があがる傾向にあった.
【考察】
要精検の頻度はカテゴリー3と4で差があるためカテゴリー3所見においては精密検査を必要とする症例の洗い出しが重要であることから検査技師に負担が生じやすい.カテゴリー判断する上で,所見に加えて患者背景の情報収集がその後の事後管理に有用であり,今後は事前に情報収集を行うシステムも検討する必要があると考えられた.カテゴリー4では病歴に関係なくその超音波所見からすべての症例において精密検査が必要であった.
【結語】
カテゴリー分類は所見の客観的な評価向上に有用であり,技師の知識と技術の向上に役立つものと考える.