Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

特別プログラム 消化器
シンポジウム 消化器4 腹部検(健)診判定マニュアル導入の壁vs導入事例 (消化器がん検診学会共同企画)

(S274)

腹部超音波検診判定マニュアルの前向き研究(肝疾患)

Evaluation of Abdomen Ultrasonic Wane Manual

若杉 聡1, 小宮 雅明2, 神作 慎也2, 新井 悠太2, 鵜澤 綾奈2, 石井 勝2, 内海 良太2, 小田 悠太2, 石田 秀明3, 濱滝 壽伸4

Satoshi WAKASUGI1, Masaaki KOMIYA2, Shinya KANSAKU2, Yuuta ARAI2, Ayana UZAWA2, Masaru ISHII2, Ryouta UTSUMI2, Yuuta ODA2, Hideaki ISHIDA3, Toshinobu HAMATAKI4

1亀田総合病院消化器診断科, 2亀田総合病院超音波検査室, 3秋田赤十字病院超音波センター, 4東芝メディカルシステムズ超音波担当

1Department of Digestive Diagnosis, Kameda Medical Center Hospital, 2Ultrasonography Room, Kameda Medical Center Hospital, 3Center of Diagnostic Ultrasound, Akita Red Cross Hospital, 4Urtrasound System Group, Toshiba Medical Systems

キーワード :

【はじめに】
当院では2014年6月1日より腹部超音波検診判定マニュアルを人間ドック腹部超音波検査の所見記載に利用している.今回は肝疾患の所見記載について,検診判定マニュアルの有用性と問題点について検討した.
【対象と方法】
対象は2014年6月1日より8月31日までの期間に当院人間ドック腹部超音波検査を受診した2012例である.これらについて,腹部超音波検診判定マニュアルに則りカテゴリー分類し,事後判定を試みた.その上で,肝腫瘤性病変について,その頻度と特徴を検討した.
【結果】
カテゴリー分類では,精査や加療が必要のないカテゴリー1,2が91%を占めた.カテゴリー3は,全体の4%だった.カテゴリー3の95%は充実性腫瘤だった.精査ないし加療が必要な充実性腫瘤はカテゴリー3のうち2%であり,大部分は経過観察でよいという結果だった.カテゴリー4は全体の3%であった.全例充実性肝腫瘤だった.本来全例精査すべきであったが,60%が精査指示されていなかった.カテゴリー5は1例で肝細胞癌であった.2012例中,充実性肝腫瘤は256例(12%)だった.単発は190例で,多発が66例だった.多発症例のうち初回指摘はわずか9例であり,大部分は経年観察で大きさ,数に大きな変化がなかった.超音波検診判定マニュアルに則り事後判定した結果,D1(要加療),D2(要精検)判定とするべき症例は58例(3%)であった.経年例で変化がない多発腫瘤症例31例を当院ではD1,D2判定としていなかった.その分を減ずるとD1,D2症例は27例(1%)だった.
【考察および結語】
腹部超音波がん検診基準では,事後判定の記載がなかった.腹部超音波検診判定マニュアルでは,事後判定の記載が加わったため,診断を下す医師にとって,非常に使いやすいものとなった.しかし,本マニュアルで事後判定すると,D1,D2判定が全国標準より高くなる傾向がある.肝疾患については,多発肝腫瘤の事後判定でD1,D2判定が多くなるものと思われ,今後の検討課題と考える.