Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

特別プログラム 消化器
シンポジウム 消化器4 腹部検(健)診判定マニュアル導入の壁vs導入事例 (消化器がん検診学会共同企画)

(S273)

カテゴリー分類の導入と腹部超音波検診判定マニュアルの評価

Evaluation of newly revised categorized criteria for ultrasound cancer screening

岩下 和広1, 御子柴 恵1, 林 克義1, 細田 哲夫1, 佐々木 仁美1, 石川 雅英1, 宮下 昌徳1, 小松 昭彦1, 熊谷 金彦1, 岡庭 信司2

Kazuhiro IWASHITA1, Megumi MIKOSHIBA1, Katsuyoshi HAYASHI1, Tetuo HOSODA1, Hitomi SASAKI1, Masahide ISIKAWA1, Masanori MIYASHITA1, Akihiko KOMATSU1, Kanehiko KUMAGAI1, Sinnji OKANIWA2

1飯田市立病院放射線技術科, 2飯田市立病院消化器内科

1Department of Radiological Technology, Iida Municipal Hospital, 2Department of Gastroenterology, Iida Municipal Hospital

キーワード :

【はじめに】
2011年に日本消化器がん検診学会より,腹部超音波がん検診の質的向上と精度評価を目的に腹部超音波がん検診基準(以下旧判定)が発行され,更に2014年には本学会と消化器がん検診学会,日本人間ドック学会と連携し事後指導を整備した腹部超音波検診判定マニュアル(以下新判定)が新たに作成された.当院では2011年7月から旧判定を導入し,2014年7月から新判定を用いてカテゴリー分類を行っている.
【対象および検討内容】
2011年7月から2014年6月の3年間に当院の人間ドックで腹部超音波検査を施行した5323名を対象とした.検討内容は旧判定における臓器別カテゴリー分類の結果,旧判定と新判定における技師と判定医の超音波所見の乖離頻度の変化,臓器別の乖離例の頻度と乖離所見の変化,要精検率(事後指導D)の変化について検討を行った.さらに,当院のカテゴリー分類導入の手順や,カテゴリー導入によるメリットとデメリットついても報告する.
【結果】
全臓器のカテゴリー(以下C)の分布はC0-0.9%,C1-76.1%,C2-19.7%,C3-2.1%,C3’-0.6%,C4-0.4%,C4’-0.3%,C5-0.003%で,腎臓のC4とC5からそれぞれ1例の腎癌が発見され,脾臓のC4から悪性リンパ腫が発見された.技師と判定医の乖離頻度は旧判定では19.8%に見られたが,新判定では11.6%に減少した.臓器別乖離頻度は旧判定では肝臓,脾臓,胆道,腎臓,膵臓,その他の順に多く認めたが,新判定では肝臓,胆道,腎臓,膵臓,脾臓,その他の順となった.旧判定の要精検率は2.5%であったが,新判定では1.9%に減少した.
【考察】
乖離例は肝臓と脾臓で多く減少し,超音波所見の改訂が一因と考えられた.乖離例の多くが見落とし例や所見の取り間違いであり,検査担当技師のスキルアップと教育が必要と考えられた.要精検率は新判定では肝臓,膵臓,その他を除いて減少しており,超音波検診の精度向上につながると考えられた.カテゴリー分類を用いることにより評価すべき項目が増え検査時間も長くなるが,技師個々に任せられていた判定基準の統一ができ技師のレベルアップにもつながると考えられた.
【結語】
新判定を用いることにより,超音波所見の乖離と要精検率が減少した.カテゴリー分類を用いることは技師のレベルアップにもつながると考えられるが,普及には詳細な解説や技師の指導・教育に加え,継続的な超音波所見の改訂も必要と考えられる.