Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

特別プログラム 消化器
シンポジウム 消化器2 もう一度考える,組織所見から見た超音波画像

(S265)

肝細胞癌における高エコー部分の意味

The meaning of the higher echoic area in a Hepatocellular carcinoma

小川 眞広1, 森山 光彦1, 杉谷 雅彦2

Masahiro OGAWA1, Mitsuhiko MORIYAMA1, Masahiko SUGITANI2

1日本大学病院消化器内科, 2日本大学医学部病理診断科

1Department of Gastroenterology, Nihon University Hospital, 2Department of Pathology, Nihon University School of Medicine

キーワード :

【目的】
肝細胞癌の特徴として診断基準にも挙げられているmosaic patternがある.これは,腫瘍内の脱分化現象の変化ともいわれている.これに対しmosaic状になる前の段階の比較的早期のがんでは高エコー腫瘤像を呈することがある.したがって超音波診断における高エコー領域は重要な意味を持つと考えられる.しかし,小さな癌診断に用いられる針生検では腫瘍全体の特徴を必ずしも表さない場合もあるため慎重な評価が必要であると考えられる.そこで今回我々は,手術症例において超音波B-modeで高エコー部分を内包した肝細胞癌に対し改めて組織標本と対比し,肝細胞癌の診断における高エコー領域の意味するところを検討したので報告をする.
【対象】
2010〜2014年本院で術前約1ヶ月以内に超音波検査が施行された肝細胞癌症例84症例である.超音波診断装置:GEヘルスケア社製LOGIQ7,8,9,E9,使用探触子
【方法】
超音波B-modeで観察を行いその後sonazoid® 0.5ml/bodyを用いて造影超音波検査を施行した.切除後の組織標本とB-mode所見を比較し高エコー部分の組織像の再評価をおこなった.
【結果】
背景因子はB型,C型,その他の割合が各15%,70%,15%である.塊状型を除く平均腫瘍径23.3mmである.超音波B-modeで高エコー化の部分は細胞質の淡明化している部分である事が多く,早期肝細胞癌では脂肪化,中分化型肝細胞癌においてはClear cellが中心であった.造影超音波検査においては脂肪化の部分も含めてB-modeで高エコー部分についても腫瘍濃染像を認めた.
【考察】
肝細胞癌における高エコー部分に関しては早期肝細胞癌の場合と古典的な肝細胞癌の部分的な高エコー部分と分けて考える必要があると思われた.前者は脂肪化がほとんどでありこれを的確に診断する事が早期肝細胞癌の診断のポイントとなり部分的な脂肪沈着,肝血管腫との鑑別が重要となるが造影超音波検査で腫瘍濃染像を呈することより鑑別が可能であると考えられた.古典的な癌では中分化型の肝細胞癌が多くをしめるが腫瘍の脱分化の過程として脂肪化の部分的な残存,またはclear cellであり,高エコー部分=早期癌となるわけではないことが確認され注意が必要と考えられた.
【結論】
肝細胞癌における高エコー化は脂肪化とclear cellが多くを占めていた.