Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

特別プログラム 消化器
シンポジウム 消化器2 もう一度考える,組織所見から見た超音波画像

(S264)

病理組織所見と超音波画像の乖離-基礎工学の知識がなければ,乖離の原因がわからない-

Difference between Pathological findings and Ultrasonographic findings

若杉 聡1, 小宮 雅明2, 神作 慎也2, 金輪 智子2, 小川 ゆかり2, 新井 悠太2, 村上 結香2, 石田 秀明3, 濱滝 壽伸4

Satoshi WAKASUGI1, Masaaki KOMIYA2, Shinya KANSAKU2, Tomoko KANAWA2, Yukari OGAWA2, Yuuta ARAI2, Yuka MURAKAMI2, Hideaki ISHIDA3, Toshinobu HAMATAKI4

1亀田総合病院消化器診断科, 2亀田総合病院超音波検査室, 3秋田赤十字病院超音波センター, 4東芝メディカルシステムズ営業部超音波グループ

1Department of Digestive Diagnosis, Kameda Medical Center Hospital, 2Ultrasonography Room, Kameda Medical Center Hospital, 3Center of Diagnostic Ultrasound, Akita Red Cross Hospital, 4Urtrasound System Group, Toshiba Medical Systems

キーワード :

【はじめに】
病理組織と超音波画像を対比することは重要であるが,両者の乖離を経験することはしばしばである.その乖離の原因を理解するにためには,基礎工学の知識が重要である.我々は,実際の症例で乖離の原因を検討,考察した.
【正常組織】
脂肪肝では肝のエコーレベルが上昇する.しかし,脂肪成分が増加するからエコーレベルが上昇すると考えるのは,短絡的である.皮下脂肪は無エコーに近い低エコーである.
【肝腫瘍】
肝腫瘍の切除標本と病理組織を対比すると,超音波画像が病理組織像を全く反映していない症例を経験する.その代表例を検討すると,大部分は肝表面に近い病変だった.肝腫瘍を手術する場合,肝の辺縁部に近い病変ほど切除しやすい.手術症例で病理組織像と超音波検査像を対比する際にこの点を考慮しないと,大きな誤解を生むことになる.
【胆道症例】
Bmode画像で広基性の隆起を疑ったが,実際には,有茎性隆起である症例が存在する.その原因も基礎工学の知識で理解できる.
【膵症例】
病理組織と対応できていないが,CT,MRI画像で脂肪腫と診断されたが,超音波画像上,高エコーとして描出された症例と,低エコーに描出された症例が存在する.
【考察】
病理組織と超音波検査像を比較する上での大きな問題点が2点ある.
1)後方散乱の知識を理解するべきである点
病理組織と超音波画像の乖離を理解するには,後方散乱の知識が必要である.正常の脂肪組織と脂肪肝のエコーレベルの差,高エコーの膵脂肪腫と低エコーの膵脂肪腫が存在することは,後方散乱で説明可能と考える.
2)多重反射の影響を考慮すべきである点
肝腫瘍や胆嚢腫瘍で,肉眼形態や病理組織像を超音波検査画像が反映しない例の多くは,多重反射で理解可能である
最後に,病理組織像と超音波検査像が乖離することが多いから,その対比に意味がないと考えるのは早計である.乖離があると声を大にして訴える発表者は,多数の症例で対比を重ねているから,その事実を知ったのである.今後も病理組織と超音波検査像との対比は重要であることに変わりがない.
【結語】
病理組織像と超音波検査像の対比を行って基礎工学の重要性を再認識した.