Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

特別プログラム 消化器
シンポジウム 消化器1 Critical pointを決定する超音波のサイン

(S261)

膵負荷状態の超音波診断

Diagnostic Ultrasound of The Pancrea Loading State

川嶌 隆

Yutaka KAWASHIMA

川嶌内科小児科クリニック内科

Internal Medicine, Kawashima Internal Medicine Pediatric Clinic

キーワード :

開業医を訪れる患者の中心は早期・軽症例であり,「超音波診断基準」に当てはまらぬケースが大半を占める.また,消化器疾患のみに限定されることはなく,年齢・性別・臓器を問わず多種多様な訴えや健康診断的な対応も要求されるという“現実”が存在する.
このような中,今まで研鑚を重ねてきた超音波検査の有用性を如何に充実させて行くかが大きな課題であった.
当初,診断基準に合致しない腹痛症例に対しての膵炎治療が劇的に奏功したことをきっかけに,最終的には尿中膵アミラーゼ/クレアチニン比と呼応する超音波像の変化から「膵負荷状態」を診断するに至った.さらに,「膵負荷状態」を示す超音波上の変化が腹痛症例以外の様々な訴えの場合にも認められることを知り,膵負荷解消目的での治療後に自覚症状の改善と並行する形で実施した超音波像の変化も確認した.
これらの事実から,「膵負荷状態」は膵臓そのものに限定されるものではなく,消化管さらには全身にも影響を与え,注意信号的に様々な自覚症状や病気の根本的な原因になっている可能性が示唆され,これを解消することが,問題の早期解決に貢献することが期待された.
超音波上の主な確認ポイントは①膵体部前後厚と同部の圧痛の有無②胆嚢短軸径と壁肥厚像・圧痛の有無③肝門部肝外胆管内径④腸管内容貯留像等であり,これらの所見の組み合わせから負荷の程度や慢性的な膵負荷の可能性,さらには根本的な消化能力の強弱の推定を行なった.
膵の厚みは消化能力の強さと食事量の変化を反映し,胆嚢短軸径からは膵負荷の強さの程度を推定し,肝門部肝外胆管内径からは過去の膵負荷の繰り返しの可能性を,消化管内容貯留像からは消化能力の強さを推定した.また,脂肪肝・胆石/尿路結石の存在等は食べ過ぎを示唆する所見と判断された.
安定した状況下では薄く均等な膵体部前後厚(5mm厚程度)を示す傾向にあったが,「膵負荷状態」を繰り返す症例では胆管拡張(成人の場合,内径6mm以上)・胆石の存在・過去の膵部分の圧痛等を認め,強い膵負荷状況下では,膵腫大像のほか,膵臓部分の強い圧痛/不快感・著明な胆嚢腫大像・強い消化不良像・腹水貯留像等が認められた.また,これらの超音波像の修飾因子として,ホルモン・性・基礎体力・年齢・薬・アルコール等が考えられた.
最近1か月間,当院で実施された超音波検査110例(3歳〜89歳)の主な実施理由は,腹部症状の精査が42例(原因不明9例・膵炎既往5例)・健診目的でのスクリーニング16例・心身症症例13例・胸痛/腰痛11例などであったが,小児例においては感染症の繰り返し例・アレルギー疾患例・成長障害例にも検査を実施した.いずれの場合でも,超音波上に何らかの所見が存在し「膵負荷状態」が推定された.症例によっては血中膵消化酵素・IRI値・ペプシノーゲン値等・炎症像等からの対比も実施した.
過去に経験した興味ある症例について提示させて頂く.
今回提示した内容(私見)が熱心に超音波検査に取り組んでおられる方々の将来のヒントになることを切望する次第である.