Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

特別プログラム 循環器
パネルディスカッション 循環器3 全身性疾患診療における心・血管エコーの役割

(S248)

2次元スペックルトラッキング心エコー図法によるファブリー病の鑑別診断について

The Differential Diagnosis of the Fabry Disease by the Two Dimensional Speckle Tracking Echocardiography

川井 真

Makoto KAWAI

東京慈恵会医科大学内科学講座循環器内科

Division of Cardiology, Department of Internal Medicine, The Jikei University School of Medicine

キーワード :

【目的】
全身性疾患に伴う心筋症である二次性心筋症では左室壁肥厚を伴うことも多く,スクリーニング検査として行った心エコー図検査結果を契機として,確定診断へ至ることもある.左室壁肥厚を認める代表的な全身性疾患であるファブリー病は,全身の細胞のライソゾームに存在する加水分解酵素,α-ガラクトシダーゼA活性が欠損または低下することにより生じるスフィンゴ糖脂質代謝異常症であり,心臓のみが障害される心ファブリー病は,心臓肥大患者の中に比較的高い頻度(心臓肥大の男性患者の3%)で存在すると報告されている.本研究では,左室壁肥厚が主な病態である,肥大型心筋症や高血圧性心疾患との鑑別を,2次元スペックルトラッキング心エコー図法により行った.
【対象】
左室壁肥厚を疑い,心エコー図検査を行った症例のうち各種中等度以上の弁膜症と心筋梗塞,心臓手術後症例を除いた119例(女性51名含む)を対象とした.
【方法】
全症例を,ファブリー病(29例),閉塞性肥大型心筋症(19例),非閉塞性肥大型心筋症(36例),高血圧性心疾患(35例)へ4群化し,心機能に関して分散分析にて比較検討した.
【結果】
各疾患群(ファブリー病・閉塞性肥大型心筋症・非閉塞性肥大型心筋症・高血圧性心疾患)において,拡張末期左室内腔径(45.6±5.6§・44.2±3.2§・45.9±5.6§・49.3±5.7 mm),中隔壁厚(11±3・15±4*§・14±4*§・12±2*†‡mm),後壁壁厚(11±3§・11±2・10±2§・12±1.0*‡mm),左室駆出率(70±8§・71±6§・68±5・66±5*†%),E/A(1.4±0.8†‡§・0.9±0.2*・1.0±0.6*・0.9±0.4*),E/e’(10.9±2.9§・9.6±3.7・9.8±4.2・8.6±2.9*),global longitudinal strain(GLS)(8.9±3.8†・14.2±4.5*†§・9.8±4.0†・10.9±3.8†%)(p<0.05,*:vs.ファブリー病,†:vs.閉塞性肥大型心筋症,‡:vs.非閉塞性肥大型心筋症,§:vs.高血圧性心疾患)であり,ファブリー病では閉塞性肥大型心筋症に比しGLSの低下を認めた.さらに,ファブリー病群には壁肥厚の明らかでない症例も含まれていたので,中隔壁厚で11mm以上(肥厚あり)と未満(肥厚なし)の2群に分けて解析を行うと,GLSは肥厚あり群6.9±3.0%に対して,肥厚なし群10.5±3.6%であり,他群間に有意差を認めた(図).
【結論】
左室肥大を呈する疾患において,ファブリー病の鑑別に2次元スペックルトラッキング解析が有用であることが示唆された.