Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

特別プログラム 循環器
パネルディスカッション 循環器3 全身性疾患診療における心・血管エコーの役割

(S247)

尿毒症性心筋症に対する腎移植術の効果

The beneficial effects of renal transplantation on uremic cardiomyopathy

飯野 貴子, 渡邊 博之, 新保 麻衣, 佐藤 和奏, 伊藤 宏

Takako IINO, Hiroyuki WATANABE, Mai SHIMBO, Wakana SATO, Hiroshi ITO

秋田大学大学院医学系研究科循環器内科学

Akita University Graduate School of Medicine, Department of Cardiovascular Medicine

キーワード :

【背景】
末期腎不全患者における心機能低下は,“uremic cardiomyopathy(尿毒症性心筋症)”という病態として知られている.左室肥大,左室拡大などのリモデリング,左室の収縮・拡張機能障害を背景として,心不全,心臓関連死を引き起こすが,いまだ尿毒症性心筋症に対する有効な治療法は確立されていない.末期腎不全の治療法には透析と腎移植が挙げられ,腎移植を受けた患者の5年生存率は透析患者と比較して良いことが報告されている.しかし,腎移植後の心機能に関する詳細な検討はこれまでなされておらず,尿毒症性心筋症に対する腎移植術の効果は不明である.
【目的】
末期腎不全患者の腎移植前後の心機能及び形態評価を行い,尿毒症性心筋症に対する腎移植術の効果を検討すること.
【方法】
当院で腎移植術を施行された28症例を対象とし,腎移植術施行前の左室駆出率が50%以上の群(HFpEF群;18例)と,50%未満の群(HFrEF群;10例)の二群に分け,腎移植術前後の心機能を比較検討した.術前,術後1ヶ月,6ヶ月,12ヶ月の時点で,心エコー検査,123I-MIBG心筋シンチグラフィーを施行した.
【結果】
両群で,腎移植前と比較し,術後12ヶ月の時点で,左室心筋重量係数(HFrEF群;184±44 vs. 131±25 g/m2,腎移植前vs.術後12ヶ月,p<0.01,HFpEF群;141±20 vs. 122±22 g/m2,腎移植前vs.術後12ヶ月,p<0.05),左室拡張末期容積(HFrEF群;139±30 vs. 103±18 ml,腎移植前vs.術後12ヶ月,p<0.05,HFpEF群;117±22 vs. 92±17 ml,腎移植前vs.術後12ヶ月,p<0.05)は有意に低下した.なかでも左室心筋重量係数の変化率は,HFrEF群において,HFpEF群に比し有意に大であった(-27±5 vs. -8±7%,HFrEF群vs. HFpEF群,p<0.05).腎移植術前,HFrEF群の左室駆出率は46±3%と低値であったが,術後,経時的に増加し(46±3 vs. 71±4%,腎移植前vs.術後12ヶ月,p<0.0001),術後12ヶ月の時点で,HFpEF群と有意差を認めないまでに改善した(腎移植から12ヶ月後の左室駆出率;69±4 vs. 70±6%,HFrEF群vs. HFpEF群,p=0.68).両群で,腎移植術前に比し術後有意に収縮期血圧(149±16 vs. 126±9.7 mmHg,腎移植前vs.術後12ヶ月,p<0.001),拡張期血圧(87±11 vs. 74±8.5 mmHg,p<0.001)の改善,貧血の改善(10.8±0.7 vs. 12.0±1.5 g/dL,p<0.001),MIBG洗い出し率の低下(19.6±3 vs. 10.2±0.9%,p<0.01)を認めた.
【結語】
末期腎不全患者において,腎移植術後に左室リバースリモデリングが認められた.なかでも腎移植前HFrEF群では,左室リモデリングの改善のみならず左室駆出率も改善していた.腎移植術後の心機能回復には,血圧,貧血の改善に加え,交感神経活性の低下が関与している可能性が示唆された.