Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

特別プログラム 基礎
パネルディスカッション 基礎2 超音波による治療技術

(S231)

高速超音波撮像によるイメージング下でのキャビテーション気泡援用集束超音波加熱治療

Focused ultrasound thermal treatment enhanced by cavitation bubbles with high-speed ultrasound imaging

吉澤 晋1, 高木 亮2, 後藤 功太1, 神保 勇人1, 松浦 景子2, 梅村 晋一郎2

Shin YOSHIZAWA1, Ryo TAKAGI2, Kota GOTO1, Hayato JIMBO1, Keiko MATSUURA2, Shin-ichiro UMEMURA2

1東北大学大学院工学研究科, 2東北大学大学院医工学研究科

1Graduate School of Engineering, Tohoku University, 2Graduate School of Biomedical Engineering, Tohoku University

キーワード :

【目的】
強力な超音波照射によって生じるキャビテーション気泡は,超音波による細胞への薬物導入や超音波による組織加熱などを増強することが知られている.MHzオーダの医療用超音波によって発生するキャビテーション気泡の大きさは,マイクロメートルオーダもしくはそれ以下で溶解時間が非常に短いと考えられるため,その検出には平面波送信等を用いた高速超音波撮像が有効である.ここでは,高速超音波撮像によって得られたキャビテーション気泡の発生領域,持続時間の知見を基に,気泡を効率的に援用する超音波加熱凝固治療法を開発することを目的とする.また,そのような超音波照射方法において,組織の加熱凝固をモニタリングする超音波イメージング手法についても検討を行う.
【方法】
キャビテーション気泡を発生するため,直径120 mm,焦点距離120 mm,128chのHIFU(強力集束超音波)用アレイトランスデューサを用い,焦点の電子走査を行った.走査点は,HIFU伝播軸垂直平面内の1辺3 mmの正六角形頂点の6点とした.周波数は1 MHzとし,気泡を発生させるための64 kW/cm2の強力かつ短時間の気泡生成用パルスと2.2 kW/cm2の連続波を,繰り返し周波数7.3 Hzで16.5 s照射した.パルス繰り返しの間には2 msのHIFU休止時間を設け,この間に高速超音波イメージングを行った.HIFU照射対象は脱気された鶏胸肉,鶏ささみ肉とした.また,HIFU焦点を走査しない実験も行い,そこで得られた超音波エコー信号からポスト処理によってフレーム間の相関値を算出し,加熱凝固領域の抽出を試みた.
【結果と考察】
焦点を電子走査する実験では,超音波イメージングによって,HIFU焦点よりもトランスデューサ側に気泡領域が観測された.そのため,気泡生成用パルスの焦点のみをトランスデューサから遠方方向に10 mm遠ざけて照射を行った.その結果,HIFU連続波の焦点を中心とした気泡領域が観測できた.さらに,形成した加熱凝固領域断面写真を画像処理した結果,連続波焦点を中心とした気泡領域が観測されたケースでは,トランスデューサ側に偏ったケースと比較して,凝固領域の境界がより明瞭になっていることが確認された.熱凝固領域の抽出実験では,気泡発生領域よりも外側に広がった組織変化領域が原因と思われる超音波エコー信号の非相関を検出することができた.
【結論】
超音波キャビテーション気泡を高速超音波撮像によって可視化し,その発生領域の特性に関する知見に基づいて,治療位置および領域精度の高いキャビテーション援用HIFU照射方法を開発できた.また,そのようなキャビテーション援用HIFU加熱においても,従来の超音波エコー信号の非相関による組織変化検出手法が有効である可能性が示せた.