Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

特別プログラム 基礎
パネルディスカッション 基礎1 超音波はどこまで安全か

(S229)

超音波造影剤投与下の音響放射力インパルス(ARFI)のウサギ心臓への照射と期外収縮

The extra systolic waves evoked by ultrasound with acoustic radiation force impulse(ARFI)exposed on the rabbit heart and ultrasound contrast agent

石黒 保直1, 新田 尚隆2, 赤井 一揮3, 高山 法也4, 小形 幸代5, 笹沼 英紀1, 安田 是和1, 谷口 信行4, 秋山 いわき3

Yasunao ISHIGURO1, Naotaka NITTA2, Kazuki AKAI3, Noriya TAKAYAMA4, Yukiyo OGATA5, Hideki SASANUMA1, Yoshikazu YASUDA1, Nobuyuki TANIGUCHI4, Iwaki AKIYAMA3

1自治医科大学消化器・一般外科, 2産業技術総合研究所ヒューマンライフテクノロジー研究部門, 3同志社大学生命医科学部医情報学科, 4自治医科大学臨床検査医学, 5自治医科大学循環器内科

1Department of Surgery, Jichi Medical University, 2Human Technology Research Institute, National Institute of Advanced Industrial Science and Technology(AIST), 3Faculty of Life and Medical Sciences, Doshisha University, 4Department of Clinical Laboratory Medicine, Jichi Medical University, 5Division of Cardiovascular Medicine, Jichi Medical University

キーワード :

【目的】
音響放射力インパルス(ARFI : Acoustic Radiation Force Impulse)は,それに伴って発生する剪断波を用いて様々な組織の硬さを評価できるため,すでに臨床応用されている.ARFIでは通常より強い超音波を用いるため,超音波造影剤と併用すると,ARFIによる作用が増強され組織損傷がおこる可能性がある.心臓(心筋)においても,組織硬度および血流評価の目的で両者が併用される可能性があり,超音波造影剤存在下でのARFIを伴う超音波が心臓におよぼす影響について,動物実験で検討を行った.
【方法】
ウサギ(日本白色,オス,3kg)を用いて実験を行った(n=3).ウサギを全身麻酔下に仰臥位とした.前胸部の体毛を除去し,超音波診断装置で心臓(心室)が描出される肋間を確認した.ARFIを伴う超音波照射には専用の振動子を用いた.この振動子を前述の肋間にゲルを介して密着させた.照射の条件は,Mechanical Index(MI):1.8,照射時間:0.3 msecとした.ARFI照射は心電図をもとに,最も外的刺激に感受性があるといわれるT波の手前30msecの付近(受攻期)を中心に行った.6心拍に1回の照射を,造影剤の投与パターンごとに50回行った.超音波造影剤は,ソナゾイドTM(ペルフルオロブタン)を用いた.造影剤投与なし,0.8μl MBの単回静注,1.6μl MBの持続点滴(30分)についてそれぞれ照射を行った.心電図は,両側の前胸部皮下に刺入した針を電極として記録した.
結果:ARFIを伴う超音波照射により,超音波造影剤の持続点滴時のみに期外収縮が観察された.持続点滴とともに行った照射のうち4.2-59.6%に期外収縮を認め,そのほとんどが上室性の波形であった.心室頻拍・細動などの生命にかかわる不整脈は認められなかった.
【考察】
超音波造影剤投与下に,ARFIを伴う超音波を心臓に照射すると期外収縮が発生した.造影剤の持続点滴を行った時のみではあるが,より高濃度の造影剤存在下にARFIを伴う超音波を照射することで期外収縮を起こすに足る刺激が発生するものと考えられる.期外収縮の発生機序については不明な点も多く,今後より詳細に検討を重ねる必要がある.
【結語】
動物実験ではあるが,ARFIを伴う超音波(MI:1.8)と超音波造影剤の併用で期外収縮が発生することが確認された.生体での安全性が確認できるまでは,心臓に対してのARFIを伴う超音波検査については慎重に対応すべきで,超音波造影剤との併用も控えるべきである.