川島 雅央¹, 山賀 郁¹, 鳥井 雅恵¹, 常盤 麻里子¹, 片岡 正子², 金尾 昌太郎², 高田 正泰¹, 浅尾 恭史^{1, 3}, 椎名 毅⁴, 戸井 雅和¹

Masahiro KAWASHIMA¹, Iku YAMAGA¹, Masae TORII¹, Mariko TOKIWA¹, Masako KATAOKA², Shotaro KANAO², Masahiro TAKADA¹, Yasufumi ASAO^{1, 3}, Tsuyoshi SHIINA⁴, Masakazu TOI¹

¹京都大学大学院医学研究科乳腺外科学, ²京都大学大学院医学研究科放射線医学, ³キヤノン株式会社医用イメージング推進プロジェクト, ⁴京都大学大学院医学研究科人間健康科学

¹Department of Breast Surgery, Graduate School of Medicine, Kyoto University, ²Department of Diagnostic Imaging and Nuclear Medicine, Graduate School of Medicine, Kyoto University, ³Medical Imaging Project, Canon Inc., ⁴Department of Human Health Science, Graduate School of Medicine, Kyoto University

キーワード :

【目的】
乳癌の発生進展に伴って生じる血管新生と，その結果生じる組織内低酸素が癌の浸潤転移を促進することが知られており，癌組織中の血管構造と低酸素は腫瘍特性を反映する新しい指標として注目されている．光超音波マンモグラフィーは光音響技術を基礎にした新しい診断装置で，乳房内のヘモグロビン（Hb）分布とその酸素飽和度を画像化することが可能である．今回我々は第二世代光超音波マンモグラフィー（PAM-02）を開発し，第一世代機（PAM-01）［1］と比較した臨床的有用性の評価を行った．
【対象】
京都大学医学部附属病院を受診した原発性乳癌または良性腫瘍を有すると診断された患者で，文書による同意が得られた患者を対象とした．研究計画は医の倫理委員会での審査を受け臨床介入研究としての承認を得た（UMIN000007464）．
【方法】
PAM-02を用いて乳房内のHb分布と酸素飽和度の評価を行った．波長756nm，797nmの近赤外線光をそれぞれ乳房に照射して発生する光音響シグナルを取得して再構成する事で，乳房内のHb分布と酸素飽和度を光音響画像（PAT像）として作成した．酸素飽和度はカラースケールを用いて画像上に表現し，病変外の血管を対照として病変内部および病変辺縁に存在するHbの低酸素状態を評価した．病変占拠部位は同時に取得したBモードエコー像とPAT像の融合像を作成し同定した．Bモードエコー像で病変が特定困難な場合は造影MRI画像とPAT像の融合像を作成して病変部位を推定した．融合にはMRI画像とPAT像の対応する血管分岐部に手動で約30点の対応点を設定し，それらの位置をThin-Plate Spline関数を用いた変形モデル［2］によって一致させた．
【結果】
23名の患者がリクルートされ，18か所の浸潤癌，5か所の非浸潤癌，6か所の良性病変が評価された．平均腫瘍径は浸潤癌，非浸潤癌，良性病変でそれぞれ21.2mm，42.8mm，11.3mmであった．Bモードエコーによる病変部の検出率は浸潤癌，非浸潤癌，良性病変でそれぞれ83％，20％，50％で，検出された最小の病変は8mmの浸潤癌であった．病変内部でのHbシグナルの検出率は浸潤癌，非浸潤癌，良性病変でそれぞれ89％，80％，17％であった．一方，病変辺縁でのHbシグナルの検出率はそれぞれ100％，100％，17％であった．また，浸潤癌83％，非浸潤癌80％で病変とその辺縁部で酸素飽和度が低くなる傾向を認めた．
【結論】
PAM-02は空間解像度の向上とBモード超音波・MRI画像との融合によりPAM-01と比較して正確な病変部位の特定が可能になり，腫瘍関連血管の描出能が向上した．検出されたHbの酸素飽和度は癌病変周辺で低い傾向にあり，PAM-02が乳癌組織の特性評価において有用である可能性が示唆された．
【謝辞】
本研究は京都大学・キヤノン協働研究プロジェクトの一環として行われた．
【参考文献】
［1］Kitai T, et al. Photoacoustic mammography: initial clinical results. Breast Cancer. 2014;21（2）:146-153.
［2］Bookstein FL. Principal warps: Thin-plate splines and the decomposition of deformations. IEEE Transactions on pattern analysis and machine intelligence. 1989;11（6）：567-585.