Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

特別プログラム 基礎
シンポジウム 基礎2 超音波マルチモダリティーイメージング(基礎技術研究会・光超音波画像研究会と共同企画)

(S225)

ハンドヘルド型光音響イメージング装置による頸動脈脂質性プラークの検出の基礎的検討

Fundamental study for detection of lipid-rich carotid artery plaque using handheld photoacoustic

平野 進1, 浪田 健1, 近藤 健悟2, 山川 誠3, 椎名 毅1

Susumu HIRANO1, Takeshi NAMITA1, Kengo KONDO2, Makoto YAMAKAWA3, Tsuyoshi SHIINA1

1京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻, 2京都大学学際融合教育研究推進センター, 3京都大学先端医工学研究ユニット

1Graduate School of Medicine, Kyoto University, 2Center for the Promotion of Interdisciplinary Education and Research, Kyoto University, 3Advanced Biomedical Engineering Research Unit, Kyoto University

キーワード :

【目的】
脳梗塞や心筋梗塞の原因となる病態に動脈硬化(アテローム硬化)がある.アテローム硬化は血管壁内へのコレステロールなどの脂肪成分の沈着により生じる脂肪性プラークに始まり,線維化を経て石灰化プラークへと達し,慢性的に血管を狭窄・閉塞する.初期の脂肪性プラークは不安定であり,外部からの刺激により崩壊し,急性に血管を閉塞する可能性があるため,早期に発見し,病態の進行の抑制・崩壊の予防を行う必要がある.超音波検査によりプラークの発見はできるが,プラークの性状を識別することができない.
そこで,光音響イメージングを用いて血管内プラークの性状診断を行う事を検討した.光音響イメージングではパルス光を照射し,組織が光を吸収し発生させる超音波を受信することで,音源である吸光体の分布や性質を画像化する.本研究では,非侵襲で操作が簡便な計測をめざし,通常の超音波診断装置のプローブに光照射部を取り付けたハンドヘルド型の装置を作成し,脂肪性プラークの性状識別の可能性を検証した.
【方法・対象】
頸動脈プラークのモデルとして,内腔を生理食塩水で満たした牛大動脈壁の一部に牛脂を注入したものを用いた.装置はリニアプローブに光ファイバを装着し,レーザ光源から断層面に照射光を導くようにした.800〜1400 nmの光を照射し,各波長での光音響信号分布像(光音響像)を計測した.
【結果・考察】
脂肪の吸収が比較的高い波長域の光音響像を見ると,血管壁と脂肪の境界付近から強い信号が見られた.この境界部分の光音響スペクトルを図1に示す.また,脂肪の吸収スペクトルを図2に示す.スペクトルのピーク位置に多少違いがあるものの,ほぼ同様のスペクトルが得られていることがわかる.脂肪の吸収スペクトルの形状が特徴的な1240〜1300 nmにおいて,正規化相互相関マッチング法により光音響像の各画素の光音響スペクトルと吸収スペクトルの類似度を求めた.結果を図3に示す.脂肪と血管壁の境界付近で高い相関を示していることがわかる.
【結論】
光音響スペクトルの解析をとおし,脂質性プラークの検出可能性を確認した.
今後の課題として,血液とその流れや皮下組織による散乱・吸収を考慮したモデルでの計測,照射光量の最適化,照射波長の選択,S/Nの向上のための信号処理などが挙げられる.
【謝辞】
本研究は京都大学・キヤノン協働研究プロジェクトの一環として行われた.