Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

特別プログラム 基礎
シンポジウム 基礎2 超音波マルチモダリティーイメージング(基礎技術研究会・光超音波画像研究会と共同企画)

(S224)

光干渉法を用いたハイドロホン校正の高周波化 —40 MHzを超えて—

Hydrophone calibration beyond 40 MHz using optical interferometry

松田 洋一, 吉岡 正裕, 内田 武吉, 堀内 竜三

Youichi MATSUDA, Masahiro YOSHIOKA, Takeyoshi UCHIDA, Ryuzo HORIUCHI

独立行政法人産業技術総合研究所計測標準研究部門音響振動科音響超音波標準研究室

Advanced Industrial Science and Technology National Metrology Institute of Japan(NMIJ), AIST

キーワード :

【目的】
血管内超音波診断(IVUS)や超音波生体顕微鏡(UBM)を用いた眼科診断,皮膚科診断等では,生体組織の微細な構造を観察するために,高周波の超音波が使用されている.これらの超音波照射に対する患者の安全性と診断情報から得られる利益とを両立させる目的で,出力される高周波超音波の音圧振幅を感度校正されたハイドロホンを用いて定量的に評価することが求められている[1].このため,当所では2014年に光干渉法によるハイドロホン感度校正の校正上限周波数を20 MHzから40 MHzに拡張した[2].今回は,校正周波数の上限を40 MHzに拡張したハイドロホン感度校正装置の概要と今後の高周波化について述べる.
【背景】
光干渉法による感度校正では,被校正ハイドロホンに入射する超音波の音圧振幅を定量的に計測するために,光を反射するフィルムを水中(透過法)または水面(反射法)に設置し,これに垂直に入射した超音波の変位振幅を光干渉計により検出する.0.5 MHzから20 MHzの帯域における感度校正では,直径が数mmの平面振動子を校正用音源として使用し,発生させた超音波を数10 cm離れた遠距離音場で計測する.遠距離音場は平面波に近いほぼ理想的な校正環境であり,ハイドロホン受波部における空間平均効果等をわずかに補正するだけでハイドロホン感度を求めることができる[3].
しかし遠距離音場での校正を20 MHzを超える高周波で実施しようとすると,超音波減衰と遠距離音場の形成に必要な伝搬距離とが増大し,計測される超音波信号のS/N比が大幅に低下する問題があった[4,5].超音波減衰は20 MHzでは0.8 dB / cmであるが,40 MHzでは3.2 dB / cmに増大する.また校正用音源直径を5 mmとすると,遠距離音場の形成に必要な伝搬距離は20 MHzでは16.5 cmであるが,40 MHzでは33 cmに増大する.そのため,20 MHzを超える高周波における遠距離音場での感度校正は実現されておらず,比較的大きな音圧振幅が得られる収束音場での感度校正のみが実現されている[4,5].
【方法及び結果】
遠距離音場を用いた感度校正の周波数上限を,従来の20 MHzから40 MHzまで拡張することを目標に開発を進めた[2].遠距離音場の形成に必要な伝搬距離が音源半径の二乗に比例することに着目し,半径が約1 mmの広帯域音源を用いて5 cmの伝搬距離で遠距離音場を形成することにより,40 MHzまでの周波数帯域における感度校正を実現した.校正用音源は,PVDF-TrFE平面振動子であり,20 MHzから40 MHzの周波数範囲における検出点での音圧振幅は40 kPaから60 kPaである.校正値の相対拡張不確かさは,25 MHzでは10.3%,30 MHzでは10.7%,35 MHzでは12.1%,40 MHzでは13.4%である.
【今後の課題】
超音波診断の空間分解能向上のニーズに応えるために,40 MHzを超えてさらなる高周波化を計画している.例えば超音波減衰は40 MHzでの3.2 dB / cmから60 MHzの7.2 dB / cmに増大することから,検出点で十分な音圧振幅の超音波を発生させることが課題となる.その解決策として,校正用音源のさらなる小型化を検討している.半径が0.5 mmの音源では,60 MHzにおいて2 cmの伝搬距離で遠距離音場を形成できる.この場合(周波数60 MHz,伝搬距離2 cm)の超音波減衰(14.4 dB)は,現在の40 MHzでの校正(周波数40 MHz,伝搬距離5 cm)のそれ(16.0 dB)と同程度である.発表では小型化を進めた音源の測定結果も報告予定である.
【参考文献】
[1]日本超音波医学会編,新超音波医学第1巻医用超音波の基礎,医学書院,133-140(2000).
[2]Y. Matsuda et al., Mater. Trans. 55,1030-1033(2014).
[3]D. R. Bacon et al., IEEE Trans. Ultrason. Ferroelectr. Freq. Control 35,152-161(1988).
[4]C. Koch et al., IEEE Trans. Ultrason. Ferroelectr. Freq. Control 46,1303-1314(1999).
[5]T. J. Esward et al., IEEE Trans. Ultrason. Ferroelectr. Freq. Control 46,737-744(1999).