Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

特別プログラム 領域横断
ワークショップ 領域横断 超音波ガイドラインのあり方を探る

(S216)

非腫瘤性病変乳房疾患ガイドラインを中心に

Non-mass abnormality of the breast

位藤 俊一

Toshikazu ITO

地方独立行政法人りんくう総合医療センター外科

Director of Surgical Department, Rinku General Medical Center

キーワード :

日本超音波医学会用語診断基準委員会の乳房領域に関する小委員会としては,非腫瘤性病変(腫瘤像非形成性病変)乳房疾患ガイドライン検討小委員会および乳房造影超音波小委員会が進行中である.非腫瘤性病変に関しては以前より議論が重ねられてきた領域であり,日本乳腺甲状腺医学会の用語診断基準委員会での議論等とも整合性をとるべく議論が進められている.乳房の非腫瘤性病変は,主項目4項目と付記1項目から構成されている.すなわち,1)乳管の異常,2)乳腺内低エコー域,3)多発小嚢胞,4)構築の乱れ,付記)点状高エコーを主体とする病変に分類されている.
1)乳管の異常の定義は,乳管の太さや内壁,壁などが正常乳管とは異なるもの.なお,異常所見としては,乳管の拡張,乳管内エコー,乳管壁の肥厚,乳管内腔の広狭不整がある.
2)乳腺内低エコー域の定義は,周囲乳腺あるいは対側乳腺と性状を異にする低エコー域で,腫瘤として認識しがたいもの.
乳腺内低エコー域で用いられる「低エコー域」は周囲乳腺のエコーレベルを基準とし,それより低エコーとして認識できる領域のことである.なお,亜分類としては斑状低エコー域,地図状低エコー域,境界不明瞭な低エコー域の3型がある.
3)多発小嚢胞の定義は,乳腺内に小さな嚢胞と認識される病変が多数認められるもの.
なお,小嚢胞と断定できないような小さな低エコー腫瘤で充実性腫瘤と断定できない場合もこれに含める.病変の分布に関しては,集簇性,区域性,びまん性のいずれかを判断した後に両側性か片側性(一側性)かを確認する.
4)構築の乱れの定義は,乳腺内の一点または限局した範囲に集中するひきつれ・ゆがみのこと.組織の収束性変化に起因すると考えられ,悪性病変だけでなく良性病変でもみられる.
付記)点状高エコーを主体とする病変の定義は,乳腺内に微細石灰化と考えられる複数の点状高エコーが局所性または区域性に存在する病変で,周囲に明らかな低エコー域や乳管の異常を伴わないもの.
以上,「非腫瘤性病変」の用語は比較的新しい概念であるが,臨床的にも簡便かつ理解しやすい内容となっており,適切な診断につながることが期待される.