Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

特別プログラム 領域横断
ワークショップ 領域横断 超音波ガイドラインのあり方を探る

(S215)

超音波ガイドラインのあり方を探る─肝臓─

Guideline for ultrasonic diagnosis: liver

熊田 卓

Takashi KUMADA

大垣市民病院消化器内科

Department of Gastroenterology and Hepatology, Ogaki Municipal Hospital

キーワード :

第2世代の超音波造影剤ソナゾイドTMによる造影超音波検査が可能となり,血管相,後血管相(クッパー相)ともに安定した画像が得られるようになった.肝腫瘤の超音波診断基準は1988年に日本超音波医学会医用超音波診断基準に関する委員会で作成されて以来,20年以上改定されていなかった.今回,第2世代の超音波造影剤が出現したのを機会に,2005年に「肝腫瘤の超音波診断基準(1988/11/30)の改訂」小委員会が立ちあげられた.肝腫瘤の質的診断のためのBモード所見の改定に加え,ドプラ所見,造影超音波所見が新設された.2012年の超音波医学3月号に「肝腫瘤の超音波診断基準」が掲載されている.対象疾患は肝細胞癌,肝内胆管癌(胆管細胞癌),転移性肝腫瘍,肝細胞腺腫,肝血管腫,限局性結節性過形成(FNH)の6疾患である.
今回は時間の関係もあり造影所見に焦点を絞り記載する.質的診断のための造影所見では時相の名称と定義の統一を図ることが重要となった.時相はまず血管相と後血管相動脈(後血管イメージ)の2つに分類し,血管相はさらに動脈優位相(血管イメージと灌流イメージ)と門脈優位相に分類した.後血管イメージは「クッパーイメージ(Kupffer image)」との呼称で使用されることが多いが,各種意見が出され,本基準に関してはエビデンスが十分でないとの見地から注)にのみ記載されている.しかし,多くの学会・研究会では「クッパー相」もしくは「クッパーイメージ」という呼称が使用されており時期を見て再検討が必要と考えている.
造影超音波による質的診断の所見はほぼ完成されてきたといってよい.ソナゾイドTMに関しては内外に多くの報告が見られる.肝細胞癌は原発性肝癌取り扱い規約に準じて2cm以下のものと2cm超のものと塊状型に分類され,結節内の詳細な血流情報を取得することで質的診断が可能である.また,後血管相は悪性度の評価に有用である.肝内胆管癌は動脈優位相では辺縁に血管影を認め,中央を突き抜ける線状の血管影を認める.転移性肝腫瘍の所見は原発巣,結節のサイズ,発育速度等に依存するが,後血管相での存在診断に威力を発揮する.肝血管腫においては極めて特徴的な画像を示しMRI等の他の画像診断の必要性は減少した.一部流速の早い肝血管腫も存在するが他の時相の所見を参考とすれば鑑別可能である.肝細胞腺腫は稀な腫瘍であるが動脈優位相血管イメージで,腫瘍境界から取り囲むように内部に細かい血管が流入するのが特徴となる.限局性結節性過形成(FNH)は動脈優位相では中心から辺縁に放射状に広がる血流を示し短時間で濃染する.後血管相では肝実質と同等もしくは高輝度となる.
一方,造影超音波の普及の最大の障害点であった造影剤の投与は,超音波造影剤専用の自動注入器(ソナゾイド・ショットTM)が薬事承認され上市が予定されている.さらに,2015年4月には診療放射線技師による自動注入器を用いた造影剤の静脈内投与が法廷行為となる予定である.これらの改正により,超音波造影剤の投与方法の均一化と更なる普及が期待できる.