Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

特別プログラム 領域横断
パネルディスカッション 領域横断3 超音波教育の現在・過去・未来

(S211)

技師教育と検査士育成(検査士の立場から:循環器)

Education and training for sonographers on echocardiography

種村 正

Tadashi TANEMURA

公益財団法人心臓血管研究所臨床検査室

Clinical Laboratory, The Cardiovascular Institute

キーワード :

心エコーや血管エコーは循環器領域では欠かすことのできない検査法となった.しかし,超音波検査は優れた面がある一方で,「検査者に対する依存度が高く,知識や経験によって結果に差が生じる」という大きな問題点を抱えている.個人や施設間のバラツキを押さえ,業界全体でレベルアップを図り,質を担保することが求められている.
【超音波教育の現状】
学生時代に受講する超音波の単位数は増えてきているが,就職して直ぐに検査ができるレベルではない.実際には超音波室に配属されて初めて本格的に超音波検査を学ぶことになる.比較的大規模な施設では新人教育マニュアルが整備され,先輩技師が半年〜1年かけて教育している.しかし,小規模な施設では教育できる技師がいなかったり,いたとしても時間と人手の余裕がなかったりしてなかなか育てられない(教えて貰えない)のが現状である.そこで,様々な団体が主催する研修会に参加したり,他施設に研修に行ったりして何とかレベルアップしようと努力している.2010年に日本超音波検査学会が行った「超音波検査の現状について」のアンケートでは,研修会に参加している技師が84%,他施設に研修に行っている技師が22%であった.学会の教育活動を頼りにしている技師が多いと推察される.
超音波に従事すると超音波検査士を取得しようとする技師が多いと思われるが,2014年12月末の日本超音波検査学会員における取得者数は9,212人で取得率は42%であった.新入会員が多く受験資格が得られていない会員が多いとためと考えられるが,受験したくても推薦を得る術がないなどの理由で断念している会員もいるようである.
認定試験では超音波検査実績(抄録20例)の提出が義務づけられおり,書類審査が行われている.この審査は報告書を書ける能力を評価しているが,先のアンケートでは,報告書を医師と技師の両方で作成しているが41%,技師だけで作成している(医師は署名するだけを含む)が46%であった.報告書についてはなかなか医師の指導を受けられないのが現状の様である.近年,報告書の書式や記載項目が施設によって差があり過ぎることが問題になっている.施設間差を縮小するためには学会が理想的な報告書のフォーマット集を提供する必要があると思われる.しかしながら,認定試験が臨床的,工学的知識を付けるだけでなく,報告書をきちんと書ける技師の育成に貢献していることは紛れもない事実である.
【超音波教育の展望】
日本超音波検査学会では講習会・研修会の他にWeb教育の強化に取り組んでいる.なかなか参加できない会員のために教育ビデオライブラリーを新規事業として立ち上げ,計測法や走査法など日常検査に直結する内容から,安全に関する教育動画,講習会・セミナーなどを配信し始めた.また,HPに研修施設紹介のサイトをオープンして,登録施設が増えていくように協力をお願いしている.
業界全体をレベルアップするためには学会中心の教育活動と施設研修が重要であり,超音波検査士を取得した後の生涯教育をどう行うのか,上位資格の指導検査士や認定専門技師をどう活用するのかが今後の課題であると思われる.