Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

特別プログラム 領域横断
パネルディスカッション 領域横断3 超音波教育の現在・過去・未来

(S209)

研修医教育と専門医育成(循環器領域)

Education of Trainee and Specialist(Cardiovascular Medicine)

山本 一博

Kazuhiro YAMAMOTO

鳥取大学医学部・病態情報内科

Faculty of Medicine, Department of Molecular Medicine and Therapeutics, Tottori University

キーワード :

私が医師となった1980年代は,超音波診断装置に装着されていたキャスターが医療機関内で機器を移動させるには不適であったため,超音波検査の特徴であるポータビリティーが生かされておらず,心臓超音波検査は患者が検査室に出診できるようになって初めて行われる特殊検査という位置づけであった(今のCTやMRIと同じ).今では機器のポータビリティーが改善され,救急患者の初療の際などでも広く心臓超音波検査は行われるようになり,循環器内科診療を行う上で必要不可欠の検査としてすべての循環器内科医がある一定のレベルまでの心臓超音波検査を施行できなければならないという位置づけにある.
このような中で,将来循環器内科を目指すものは初期研修中からも積極的に超音波検査に携わろうとするが,将来循環器内科に進むつもりのない多くの初期研修医は,他の医師や検査技師の作成した検査レポートを診療の参照とするレベルにとどまっている.後期研修期間(卒後3-5年目)では将来循環器内科を目指すものが循環器内科に在籍して研修を行うことが多いので,その中で心臓超音波検査を自ら実施するトレーニングが行われている.
循環器専門医を育成する上では,このような循環器疾患の超音波検査に関する教育のみでも十分であるが,超音波専門医には他領域の超音波検査についてもあるレベルまでの知識と検査経験が求められる.今後,新しい制度下での専門医教育が始まる中で,循環器内科を志す者は内科専門医と循環器専門医の取得にまずは力を注ぐことになる.その上で超音波専門医を取得するためには循環器領域以外の超音波検査の研修も行わなければならないので,今後のモデルプログラムの提示が重要になってくると考えている.
また高度な循環器診療を行う上で,今後はさらに高度な超音波検査のレベルが求められるようになる.例えばMItraClipなど新しい治療法を実践する上で,デバイスのデリバリーには超音波ガイドが必須となり,このレベルの心臓超音波検査を実施できるようになるには,一般的な循環器専門医育成の過程で行うような超音波検査の実践のみでは不十分である.超音波専門医育成のプログラムの中では,広い領域における超音波検査の経験と知識を得ることに加え,自らが専門とする領域でのより高度な技術と知識を得ることを合わせて目指すことになると思われる.