Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

特別プログラム 領域横断
パネルディスカッション 領域横断2 カラードプラを活かす

(S207)

新しいイメージング技術であるcSMIで見る関節リウマチの無症候性滑膜炎の評価

Evaluation of synovitis of rheumatoid arthritis using cSMI, a newer imaging technology

中坊 周一郎1, 藤井 康友2, 石川 正洋3, 布留 守敏3, 橋本 求3, 伊藤 宣3, 藤井 隆夫3, 三森 経世1, 3

Shuichiro NAKABO1, Yasutomo FUJII2, Masahiro ISHIKAWA3, Moritoshi FURU3, Motomu HASHIMOTO3, Hiromu ITO3, Takao FUJII3, Tsuneyo MIMORI1, 3

1京都大学医学部附属病院免疫・膠原病内科, 2京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻生理機能・超音波研究室, 3京都大学医学部附属病院リウマチセンター

1Rheumatology and Clinical Immunology, Kyoto University Hospital, 2Human Health Sciences Clinical Physiology and Ultrasound Labo, Graduate School of Medicine Kyoto University, 3Department of the Control for Rheumatic Diseases, Kyoto University Hospital

キーワード :

【背景】
関節リウマチ(RA)は全身の関節滑膜が炎症を起こす自己免疫疾患である.適切な治療なしでは滑膜炎はやがて近傍の骨や軟骨を破壊し,関節の変形などで患者のQOLを著しく損なう.近年RA治療薬は劇的に進歩し,その治療は単なる鎮痛から疾患活動性の完全な制御,すなわち寛解を目指すようになった.しかし臨床的寛解が達成されても関節破壊が進む例もあり,近頃はさらに厳しい基準で臨床的寛解が再定義されるようになっている.それでも関節破壊が進む例はあり,そうした例では残存する無症候性滑膜炎が関与している可能性がある.
滑膜炎の検出手段として関節エコー(US)は広く使われ,パワードプラ(PD)で検出される血流シグナルが将来の関節破壊進行と相関すると報告されている.しかし近年の厳しい臨床的寛解基準を満たす患者に限った検討は乏しく,USで検出される無症候性滑膜炎が関節破壊進行に相関するかどうかはいまだ不明確であり,否定的な報告もある.その原因として病的意義のない血流シグナルを拾い上げてover diagnosisになっている可能性がまず考えられる.しかし逆にunder diagnosisになっていることが原因の可能性もある.無症候性滑膜炎には特に微細で低流速の血流しか存在しないと思われ,従来のPDでは偽陰性になりうる.こうしたPD偽陰性の関節の中に関節破壊進行例があるために,PDの有無で分割すると両群の関節破壊進行に差がなくなるという可能性である.
そこで我々は,微細で低流速な血流の検出に優れるとされるcSMI(colored Superb Micro-vascular Imaging)を用いることで従来のPDでは検出困難な無症候性滑膜炎を描出しうるかどうか,両者を比較して検討した.
【対象】
2014年9月1日〜12月31日に当院を受診し,SDAI基準で臨床的寛解または低疾患活動性のRA患者11例.
【方法】
機器は東芝社製Aplio300,12MHzリニア型探触子を用いた.評価部位は両手指MCP関節,PIPまたはIP関節および両手関節で,手関節は橈側,正中,尺側に分け,合計26か所とした.走査は2名の医師が担当し,全て背側から施行した.各部位につきグレースケール(GS),従来のPD,cSMIそれぞれで所見の有無を調べるとともに,保存した画像から1名の医師が日本リウマチ学会ガイドラインに従い0から3点のグレーディングを行った.
【結果】
RA患者11例の計286関節を観察した.観察時の疾患活動性は寛解7例,低疾患活動性4例であった.全例女性で,罹患年数は平均12.8±10.9年であった.観察した286関節全てに圧痛,腫脹は存在しなかった.US異常所見はGSで23関節,PDで15関節,cSMIで17関節に認め,PD陽性関節は全てcSMIも陽性であった.グレーディングの総和はcSMIで13点,PDで10点であった.11例中cSMI陽性関節のある例は4例でSDAIの平均は2.1±1.2であったが,これはcSMI陰性例の2.7±1.2よりむしろ低かった.
【考察】
今回の検討で観察した全ての関節に圧痛,腫脹は無く,USで検出した異常所見は全て無症候性滑膜炎と考えられる.統計学的有意差は認めないものの,cSMIは従来のPDと比較してより多くの無症候性滑膜炎を検出できる傾向にあった.一方SDAIはcSMI陽性患者でむしろ低い傾向にあった.SDAIは患者および医師の全般評価(Visual Analogue Scale: VAS)の比重が大きく,その分寛解基準が厳格である.今回の検討では患者VASがcSMI陽性患者で16.0±10.3mm,陰性患者で21.3±11.9mmと後者でより大きかったことがSDAI値に影響している.この結果は疾患活動性指標の意義を考える上でも興味深い.
【結論】
RAにおける滑膜炎の評価は,cSMIで従来のPDより高感度に行える可能性がある.