Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

特別プログラム 領域横断
パネルディスカッション 領域横断2 カラードプラを活かす

(S207)

カラードプラを活かす −腎−

Utilization of color doppler US -kidney-

齊藤 弥穂

Miho SAITO

新生会高の原中央病院人間ドックセンター・放射線科

Ningen Dock Center, Department of Radiology, Takanohara Central Hospital

キーワード :

【腎動脈狭窄】
腎血管性高血圧は高血圧全体の1〜4%程度と報告されている.腎動脈狭窄の原因の約70%は動脈硬化性変化であり,高齢化に伴い増加傾向にある.そのほか線維筋性異型性症や大動脈炎症候群,大動脈解離などが続く.それぞれに好発年齢や好発部位があるため,腎動脈のリアルタイムな観察が鑑別診断に有用である.またこれらの病変のステント等治療前後の効果判定にもカラードプラ法は有用である.
【腎動脈瘤】
動脈硬化に伴うものが最多で,好発部位は腎動脈本幹の遠位部から腎内分枝部である.腎門部や腎洞部に嚢胞類似の球状の無エコー域として見られることが多いため,カラードプラ法で乱流を伴うカラー表示を観察することで発見できる.動脈瘤の内部に血栓による部分的な充実部や壁の石灰化を伴うこともある.腎動脈との連続性の確認が重要であり,カラードプラ法の良い適応である.
【腎動静脈奇形】
主に先天性のものを指し,cirsoid typeとaneurysmal typeの2つに分類されている.前者はnidusと呼ばれる屈曲した拡張血管の集簇で多数の動静脈短絡が存在し,後者は先天性の動脈瘤や静脈瘤の増大から発生する.Bモードではcirsoid typeは指摘が難しい.両者ともカラードプラ法でのモザイク状の異常カラー表示を描出して確認する.
【腎動静脈廔】
狭義には,腎の内部で動脈系と静脈系に交通を生じたもののうち後天的に発生するもののみを指し,医原性や外傷性に生じたものがこれに含まれる.腎動静脈廔の廔孔部そのものはBモード像では指摘できないが,カラードプラ法ではシャント血流による組織振動がもたらすモザイクカラーのアーチファクトを確認することで診断が可能となる.
【腎梗塞】
腎動脈は終動脈であるので分枝の閉塞で区域性に血流が欠損する.原因は心原性の血栓や医原性・外傷性などがあり,背部〜側腹部痛と肉眼的血尿を伴う.Bモードでは早期には腎梗塞の変化を指摘できない場合が多いが,カラードプラ法では早期から梗塞区域に一致したカラー欠損域の描出がみられる.特に血管走行方向に依存しないパワードプラが有用である.
【その他】
腎移植後の評価にもカラードプラ法は有用である.吻合部の血流の観察や梗塞の有無に加え,早期の拒絶反応の評価に用いられる.術後より刻々変化する病態の把握のため頻回の観察が必要で,最適な検査方法のひとつである.
ナットクラッカー現象は,大動脈と上腸間膜動脈の間隔が4mm以下と解剖学的に狭い場合,左腎静脈がうっ滞して腎門部側で拡張する病態である.狭小部にカラードプラでジェット流を認めることで診断できる.重度の場合,側副血行路も観察できる.
正常変異の診断にもカラードプラ法は欠かせない.一般的には,腎柱肥大,ヒトコブラクダのコブ,胎児性分葉などが腫瘍との鑑別でよく問題となり,正常の葉間〜小葉間動静脈の同定が鑑別に有用である.いずれの場合も流速レンジを下げ,カラーゲインを上げて,末梢の小葉間動静脈のカラー表示を得るようにする.
【まとめ】
腎に対する超音波検査は非侵襲的に,迅速に多くの情報を得られる.カラードプラ法の特性を十分に理解し,かつ対象疾患の特徴像をおさえた観察を行うことで,さらに臨床現場で活用することが可能である.