Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

特別プログラム 領域横断
パネルディスカッション 領域横断2 カラードプラを活かす

(S206)

カラードプラ法を活かす 肝(肝腫瘍以外)

How to utilize of Doppler Ultrasound for liver diseases except for liver tumor?

平井 都始子

Toshiko HIRAI

奈良県立医科大学中央内視鏡・超音波部

Department of Endoscopy and Ultrasound, Nara Medical University

キーワード :

【はじめに】
最近の腹部領域における診断の流れは,Bモードによる超音波検査で異常が検出されれば直ちに造影CTやMRIがオーダーされる傾向にある.肝腫瘤の鑑別診断に対して,日本超音波医学会が公示した「肝腫瘤の超音波診断基準」で,腫瘤内の血流の多寡,血管走行,血流性状やA-P shuntなどのドプラ所見について詳細に記載され,有用性が示されているが,Bモードで検出された肝腫瘤性病変に対してさえカラードプラ法を活用することが少ないように感じられる.カラードプラ法は,造影CTや造影MRI,造影超音波などでは得られない,血流の方向,速度,性状などの詳細な血流情報を簡便に生理的な状態で,非侵襲的にリアルタイムに得ることが可能な唯一の手法である.肝腫瘍以外にも,カラードプラ法が診断に有用な肝疾患は多い.本パネルディスカッションでは,正常肝のカラードプラ像と,各種肝血管性病変やびまん性肝疾患へのカラードプラ法の応用について概説する.
【正常肝血流の特徴】
肝血流の正常像を知ることがカラードプラ法を活かすための第一歩である.肝臓の流入血管は門脈と動脈で,流出血管は肝静脈である.門脈血流は低圧で定常流を示し,門脈右枝の最高流速は20cm/s程度,門脈臍部では13cm/s程度である.食事による影響を受けて食後は血流速度が上昇する.また,呼気時にはやや上昇し,吸気時には軽度低下する.肝内動脈はカラードプラ法で門脈に絡みつくように観察され,流速レンジを12cm/s程度で観察すると,拍動性にエイリアシングを認めることで確認できる.肝静脈は中枢側では右房圧や呼吸,胸腔や腹腔内圧の影響を受け収縮期に逆流現象を伴う3相性血流波形を示す.吸気時には胸腔内圧の低下により静脈還流が増加し,Valsalva負荷により血流が低下する.末梢側では定常流を示す.
【肝血管性病変】
血管病変には,閉塞性病変と拡張性病変,シャント形成があり,通常,閉塞性病変は血栓性閉塞と腫瘍栓による.門脈や肝静脈の比較的太い部分の閉塞性病変や拡張性病変はBモードでも検出できる.末梢門脈や静脈の閉塞は,カラードプラ法で代償性に動脈血流が増加する現象や側副血行路の発達,血流方向やドプラ法による血流波形を観察することで診断できる.門脈瘤(門脈−肝静脈シャント),門脈閉塞(血栓性),cavernous transformation,門脈腫瘍栓,Budd-Chiari症候群,動脈門脈シャント,異所性右胃静脈還流異常や動脈門脈シャントに起因する偽病変などの症例を供覧する.
【びまん性肝疾患】
門脈は低圧血流であるため,肝の線維化や急性肝炎など肝実質内圧の上昇による影響を受けやすい.また,肝動脈は炎症や腫瘍により血流が増加するだけでなく,門脈血流が減少すると代償性に増加する.肝静脈は,肝実質の変化だけでなく右心機能にも影響される.肝硬変や門脈圧亢進の進行度と門脈血流や肝静脈の血流波形の変化について多くの報告がみられる.
【その他】
肝内の血流異常を検出するだけでなく,門脈圧亢進による側副路の状態,肝腫瘍に対する血管IVRの合併症,腹腔動脈圧迫症候群,腹部臓器動脈瘤などの診断にもカラードプラ法は有用である.