Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

特別プログラム 領域横断
パネルディスカッション 領域横断2 カラードプラを活かす

(S205)

カラードプラを活かす-乳房超音波診断-

The value of Doppler ultrasonography of the breast

奥野 敏隆

Toshitaka OKUNO

西神戸医療センター乳腺外科

Breast Surgery, Nishi-kobe Medical Center

キーワード :

カラードプラ法が乳房超音波診断に応用されて二十数年が経過する.日常的な検査となったが,その有用性は未だ認知されていない.日本乳癌学会の診療ガイドラインにおいても推奨グレードはC1であり,装置の精度向上や設定の標準化,検査技術の精度管理が今後の課題とされている.このような状況を鑑み,カラードプラ法の標準化と精度管理を目的としてJABTS BC-04(乳癌診断におけるカラードプラの判定基準作成およびその有用性に関する多施設共同研究)が進行中である.ここでは乳房超音波カラードプラ法を行う際の標準的な装置の設定や検査法,血流形態と分布についての用語,そして乳腺腫瘤における良悪性の鑑別診断基準の策定を試みている.これらは乳房超音波診断ガイドライン第3版にも掲載されている.以上を踏まえ,カラードプラを活かすために必須である適正な装置の設定と検査法,標準化された用語と評価基準について述べ,カラードプラ法の活かしどころについて議論したい.
1.適正な装置の設定と検査法
1)必要最小限の血流表示エリア:血流表示エリア全体にドプラ信号を割り当てるため,広すぎるエリアでは走査線密度が低下し,血流検出感度とフレームレートの低下をきたす.
2)流速に則した速度レンジ(繰り返し周波数):高すぎると低流速血流は描出されない.低すぎると折り返し現象のためモザイクが目立ち,血流形態の詳細が評価できなくなる.
3)適正なカラーゲイン:システムノイズが観察の邪魔にならない範囲で高めに設定する.ドプラ信号を増幅する機構であり,血流検出感度を調整するものではないことを理解すべきである.
4)探触子を押す圧は最小限に:良性病変や乳頭状病変は柔らかいものが多く,少し強く押すと容易に血流が途絶えてしまう.
2.標準化された用語と診断基準
1)バスキュラリティ:0,1+,2+,3+の4段階に大きさを考慮して評価する.上皮の増生の旺盛なものや乳頭状病変では良性でも豊富なバスキュラリティを示すことが多く,良悪性の鑑別には有用でない.増殖能の評価や薬物療法の効果判定における有用性が検討されている.
2)血流の分布・形態:乳腺腫瘤においては貫入・貫通する血流や周辺の血流増加は悪性を示唆する,血流を欠く,あるいは境界に沿う血流は良性を示唆する所見である.嚢胞内腫瘍においては1本の流入血流は良性を示唆する,複数の流入血流は悪性を示唆する所見である.
3.カラードプラの活かしどころ
1)乳腺腫瘤の良悪性の鑑別:Bモードで乳癌を疑う腫瘤で貫入・貫通する血流を認めれば超音波のみで乳癌と確信でき,Bモードで線維腺腫を疑うもので境界に沿う血流を認めれば無用の穿刺生検を省略できるであろう.
2)良悪性を問わず増殖能の評価.
3)術前薬物療法の効果予測や効果判定.
4)濃縮嚢胞と充実性腫瘍,あるいは嚢胞内のデブリや乳頭状アポクリン化生と嚢胞内腫瘍との判断に迷う場合,内部に血流を認めれば腫瘍と判断できる.乳頭状アポクリン化生ではしばしばtwinkling artifactを認め,血流シグナルと区別すべきである.FFT解析でノイズを示すことから確認できる.
5)逆に全く血流シグナルを認めなければ嚢胞である傍証となる.内容液のparticleがドプラ波のパワーで下方に流れるcolor streakingを認めれば嚢胞と確信できる.
6)乳腺内の低エコー・小嚢胞集族病変において血流が明らかに増加している場合,DCISをはじめとした乳管内増殖性病変が示唆され,経過観察でなく生検を行うことにより乳癌の早期診断に寄与する.
7)温存術後の創部瘢痕と癌の再発の鑑別.