Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

特別プログラム 領域横断
パネルディスカッション 領域横断2 カラードプラを活かす

(S205)

カラードプラ法の調整方法とアーチファクト

Doppler color flow imaging: Method setting parameter and Artifacts

地挽 隆夫

Takao JIBIKI

GEヘルスケア・ジャパン株式会社超音波研究開発部

Ultrasound General Imaging Japan, GE Healthcare Japan Corporation

キーワード :

1980年代初頭,わが国のアロカ社によってカラードプラ装置が世に送り出された.当初,その診断ターゲットは循環器領域の高速異常血流であった.心臓壁のclutterを抑えつつ,frame rateを確保するため,パルス繰返し周波数は,診断距離で決まる上限値近くに固定されていたが,折り返し現象を避けるために,さらに高いパルス繰返し周波数の設定が望まれることもしばしばであった.
その後,プローブと装置本体双方の高周波化と広帯域化が進むにつれて,カラードプラ法の応用範囲は全身へ広がっていった.装置側では,観察対象の血流の速度に応じて,速度スケール(速度レンジ)の調整が可能となった.速度スケール値は,一走査線方向に対するパルス繰返し周波数によって決まる計測可能な速度上限値であるが,clutterを抑圧するwall filterの特性も速度スケール値に連動して変化する.速度スケール値を低くし過ぎてclutter成分が消え残ると血流表示の低下やアーチファクトの原因となるが,低速の血流を観察する際には,逆に速度スケール値が高すぎても血流表示の低下を招いてしまう.カラードプラ法における速度スケール値の調整は重要である.
また,信号の検出感度に直接関係するパラメータではないが,時相によって流速が変化する血流を観察する上では,frame rateの確保も重要である.広い走査領域の血流を観察する際には走査線の密度を粗くしてframe rateを確保し,逆に,走査線密度を高くして観察したい時にはカラー表示の走査範囲を必要最低限まで狭める,といった調整を億劫がらずに行うことが求められる.
カラードプラ画像はBモード画像と血流画像の重畳画像である.そのため,Bモードで得られた腫瘍像と付近の血流像の位置関係が議論されることも多いが,現行の装置の空間分解能,特にスライス方向分解能に起因するslice-thickness artifactには注意が必要で,できる限り多方向からアプローチして確認するように心掛けたい.
カラードプラ装置では,基本的にエコー信号の振幅とDoppler shift周波数の情報だけから血流成分とclutter成分とを弁別している.生体内での超音波の減衰や,処理系内のノイズの存在を考えれば,clutterだけを完全に抑圧して血流成分だけを無傷のまま取り出して表示する,ということは現状では不可能である.カラードプラ法では速度表示とパワー表示が実用化されている他,スペクトル表示のドプラ法には,パルスドプラ法と連続波ドプラ法があり,定量性という面ではカラードプラ法よりも優れている.速度表示,パワー表示,パルスドプラ法に連続波ドプラ法−−それぞれの欠点を補いながら各モードを使い分けていけば,カラードプラ法の活躍の場はさらに広がると期待する.