Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

特別プログラム 領域横断
シンポジウム 領域横断3 3次元画像診断の適応と展望

(S195)

消化器領域における3D超音波

3D Ultrasound of Gastrointestinal Diseases

畠 二郎3, 嶺 喜隆1, 今村 祐志3, 眞部 紀明3, 河合 良介3, 掛江 明弘1, 中藤 流以2, 竹之内 陽子4, 谷口 真由美4, 春間 賢2

Jiro HATA3, Yoshitaka MINE1, Hiroshi IMAMURA3, Noriaki MANABE3, Ryosuke KAWAI3, Akihiro KAKEE1, Rui NAKATOH2, Yoko TAKENOUCHI4, Mayumi TANIGUCHI4, Ken HARUMA2

1東芝メディカルシステムズ株式会社超音波事業部, 2川崎医科大学食道・胃腸内科, 3川崎医科大学検査診断学, 4川崎医科大学付属病院内視鏡・超音波センター

1Ultrasound Systems Division, Toshiba Medical Systems Corporation, 2Dept. of Gastroenterology, Kawasaki Medical School, 3Dept. of Endoscopy and Ultrasound, Kawasaki Medical School, 4Endoscopy and Ultrasound Center, Kawasaki Medical School Hospital

キーワード :

【消化器領域の3D表示における問題点】
CTやMRIなどでは3D表示は日常的な手法となっている.超音波においても産科領域や循環器領域では3D表示が積極的に臨床応用されており有用性に関する報告も多くみられる.一方消化器領域では3D表示が普及しているとは言いがたい.その最大の理由として超音波には組織分解能がないため,目的とする病変や臓器を周囲組織から明瞭に分離するのが困難なことが挙げられる.言い換えれば境界を明瞭にできないためいわゆるsurface renderingが困難であり,明瞭な立体画像を構築できない.産科では羊水,循環器では心腔内の血液と組織との間に明瞭な境界が認識される点で立体表示に適していることが普及している原因である.消化器領域においても胆管,膵管など内部がほぼ無エコーな管腔が存在するが,surface renderingを行うとヒトの眼ではさほど気にならなかったサイドローブアーティファクトや多重反射などの影響で想像するような管腔として明瞭に表示されないこともしばしば経験される.内腔を造影剤で充填したり,組織を造影するといった工夫でこれらのアーティファクトによる影響を軽減することはできるが,保険適用やコスト,手間などは日常臨床に手軽に応用する上での問題点である.従って現時点では消化器領域における3D表示は簡便で普遍性のある手法とは必ずしも言えない.
【volume dataの収集と活用】
これに対し,volume dataを用いるという広い意味での3D超音波に関しては消化器領域においても期待される手法と思われる.ただし臨床上の有用性を確保するためには手技が簡便で,低コスト,かつ2Dにない情報を提供可能という条件を満たす必要がある.
データ収集に関しては位置センサーの応用により,通常用いている2Dプローブで容易かつ走査範囲の制約のないvolume dataの収集が可能となった.位置センサーは穿刺ガイドなど他の目的にも使用可能であり,3Dに特化したプローブや装置の購入を必要としない点でデータ収集に関する簡便性と低コストについては解決可能である.画像構築の点では多少の慣れを要する点で,誰もが即座に求める画像が得られるとは言えず,改良を要する.
volume dataをもとに構築した画像が2Dにない情報を提供できるかということであるが,従来のメカニカルスキャンを用いた4Dプローブ画像に比較していわゆるB面,C面ともに画質が改善しており,特に超音波で得がたいC面での評価における有用性が期待される.
【臨床的有用性】
一つは超音波の短所である描出範囲の制約が大幅に軽減されることが挙げられ,大きな臓器や広範囲の病変を一画面に表示することで全体像や周囲臓器との関係が把握しやすくなるという効果が期待される.
次にvolume dataからの任意断層面の構築により,癌の浸潤や炎症の波及した範囲をより正確に把握できる可能性が考えられるが,これには今後の検証が必要である.B面やC面の画質がA面のそれに匹敵するものとなれば,その有用性は大いに期待されるため,volume dataの構築も含めたさらなる改良が望まれる.
またVolume data内の情報量が診断に十分なものとなれば,超音波画像を検査後の解析にも耐えうる客観的データとして保存,使用することが可能となり,超音波の大きな欠点とされてきた客観性の確保や,CTなどのように撮像と画像解析の分業化といった検査形態の変革にもつながる可能性が考えられる.
【結論】
現時点では消化器領域における3D超音波は臨床上必須の手法とは言い難いが,volume dataの質的改善やそれをもとにした画像構築がより簡便なものとなれば,臨床的有用性が期待される.