Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

特別プログラム 領域横断
シンポジウム 領域横断3 3次元画像診断の適応と展望

(S193)

臨床現場における3次元心エコー図法の現状と有用性:形態及び心機能評価について

Current state and usefulness of three-dimensional echocardiography in clinical settings: assessment of cardiac structure and function

永田 泰史, 竹内 正明, 角 裕一郎, 大谷 恭子, 福田 祥大, 尾辻 豊

Yasufumi NAGATA, Masaaki TAKEUCHI, Yuichiro KADO, Kyoko OTANI, Shota FUKUDA, Yutaka OTSUJI

産業医科大学第2内科学

The Second Department of Internal Medicine, University of Environmental and Occupational Health

キーワード :

複雑な立体構造をとり瞬時瞬時に変化する心臓の形態及び機能を評価することは,日常診療における心臓疾患の診断や管理に欠かすことができない.これまで,心エコー,CT,MRIといった画像診断ツールは2次元断面での評価が中心であったが,近年技術の進歩に伴い,いずれのモダリティにおいても3次元画像の構築が可能となった.それにより2次元での評価では得られなかった情報を与えてくれるようになり,研究及び日常診療に貢献している.
3次元心エコー図法が出現し10年以上が経過し,臨床応用するための研究が数多く行われ,これまでに2次元心エコー図法では知り得なかった新しい知見が3次元心エコー図法を用いることで数多く見いだされてきた.特に弁膜症の領域においては,3次元表示やMPR法(Multi-planar reconstruction:多断面再構成法)による計測は,実地臨床において有用な情報を提供することが可能となった.
【心腔容積の計測】
日常診療において,心腔容積の計測は心疾患の診断や管理に必須な項目である.2次元心エコー図法と比較すると3次元心エコー図法は,幾何学的仮定に基づかない計測が可能であるためより正確であることは示されており,心腔容積のゴールドスタンダードはMRIに迫っている.臨床の現場において心腔容積の正確性がより求められる状況としては,治療効果の判定を時系列で見る場合である.心エコー図法は低侵襲性,簡便性に優れているため,繰り返し何回でも施行可能である.ベットサイドでも可能であり,幅広い状況で施行できる反面,取得した画像の善し悪しの影響を受けるといった問題も存在する.
【心機能の評価】
収縮能や拡張能をはじめとする心機能評価において,これまでの駆出率やDopplerによる拡張機能分類に加え,近年スペックルトラッキング法が精度の高い診断ツールとして使用可能となった.3次元での評価も可能となり,臨床研究において3次元法による評価の有用性が示されている.
【心臓の形態の評価】
3次元心エコー図法の発展により,2次元法では知ることが困難であった弁を含めた心内構造物の形態や動態評価が可能となり,研究,診療いずれの分野においても大きく貢献してきた.臨床の現場における3次元心エコー図法の最大のメリットのひとつはリアルタイムに心臓の立体構造を描出できることである.特に弁膜症や先天性心疾患において,病変部位の形態評価や近接する構造物との解剖学的な位置関係を3次元的に把握することが可能である.手術症例においては,術前より心臓外科医に3次元情報を視覚的に提供することで術式の検討の助力となる.また,近年普及の著しいstructural heart diseaseのinterventionにおいてますますその利用価値は大きくなると思われる.
このように3次元心エコー図法は,臨床の現場において有用な情報を与えてくれるが,空間,時間分解能の問題や画像の善し悪しの影響を受けるといった問題も存在する.これらの問題は,他のモダリティで補える可能性がある.エコー,CT,MRIはそれぞれ相補的な関係にあり,組み合わせにより正確な病態把握が可能となる.そのために長所だけでなく短所も十分に認識する必要がある.これらをふまえて上記の点を中心に日常臨床の現場における3次元心エコー図法の適応と展望について考えたい.