Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

特別プログラム 領域横断
シンポジウム 領域横断1 この様に行う,誤差の軽減方法(第40回日本超音波検査学会との共同企画)

(S187)

乳房超音波検査における精度管理の取り組み

Action of the Quality Control in the Breast Ultrasound

尾羽根 範員

Norikazu OBANE

住友病院診療技術部超音波技術科

Department of Ultrasonic Examination, Sumitomo Hospital

キーワード :

超音波検査は検者の技量への依存が大きいモダリティである.しかし職人芸だけで成り立っているものではなく,最低限守るべき事項に基づけば,一定のレベルを満たすことは可能であろう.
まず検者間誤差の前に,検査に使用する診断装置,探触子について述べる.さすがに古いアナログ装置や腹部用探触子を使うケースはなくなってきた.しかし依然としてみられるのが高周波電子リニア型探触子といいながら血管用探触子を使用しているケースで,描画性能に問題がある.
検者間誤差を生む要因として,画質設定,走査,判読が挙げられる.
画質設定は,現在,スペックルリダクション機能の使用が主流となっており,その濫用が目につく場合が多い.存在診断に有利だとはいっても,微妙な質的診断に支障を来たすほどの条件設定は問題である.しかし,そのような画質を設定する項目が多岐にわたるうえ,表示や機能に各社で差があり,同じメーカーでも診断装置のバージョンですら大きく変わってしまうため,具体的な数値で統一基準を設けるようなことは不可能である.そこで,日本乳がん検診精度管理中央機構の講習会で使用している資料をもとに画像評価シートを作成し,日本超音波検査学会専門部会で乳房超音波画像を評価して問題のある画質設定の是正に向けた取り組みを開始する予定である.
次に乳房超音波検査での走査であるが,乳房の皮膚に垂直に探触子を当て,十分な超音波ビームを入射するように心がけること,フォーカス位置を適正に調整して観察すること,乳房全体をくまなく走査し乳頭直下や乳腺辺縁部分など病変を見落としやすいとされる部分に注意することなどが注意点として挙げられる.これらを実行していれば,走査自体は難しいものではない.そして検査体位をはじめ,椅子やベッドなどの什器,検査室の環境などを検査しやすい環境を保つことも精度を保つことにつながると考える.これら検査環境については,乳房領域で熱心に取り組んできた経緯もあって,最近ようやく重視されるようになった.
最後に判読についてだが,画像の読みには経験が大きく影響する.講習会や症例検討などで見た画像所見を早飲み込みして判断を誤る例も多く,安易に線維腺腫や濃縮嚢胞と判断してしまう,情報過多な状況を反映したような事例も少なくないと感じている.
判読の手助けとして診断基準が提唱されている.日本乳腺甲状腺超音波医学会(JABTS)の検診用診断基準を例にあげると,経験の乏しい検者でも,最低限,精査の要否を判断できることを目的に作られているため,本来判読に重要な所見である形状や辺縁などが,客観性に乏しいということで診断基準の項目から外されている.ここは実際の検査での思考との相違があって,考え方を誤るおそれがあるなどと批判のあるところである.
そこで,診断基準の単純化と,実際の判読に近づけることを目的に,JABTSで行った診断基準の有効性を検討する多施設研究を背景として,初学者用の新たな診断基準の検討を行っており,検証を進めているところである.
以上,本抄録執筆時点では未確定の部分が多いが,当日は結果や進捗状況について言及する予定である.