Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

特別プログラム 領域横断
シンポジウム 領域横断1 この様に行う,誤差の軽減方法(第40回日本超音波検査学会との共同企画)

(S186)

血管エコーにおける誤差の軽減方法

Reduction method of the error in the vascular ultrasound

小谷 敦志1, 3, 佐賀 俊彦2

Atsushi KOTANI1, 3, Toshihiko SAGA2

1近畿大学医学部奈良病院臨床検査部, 2近畿大学医学部心臓血管外科, 3近畿大学大学院医学研究科心臓血管外科学

1Department of Clinical Laboratory, Kinki University NARA Hospital, 2Department of Cardiovascular Surgery, Kinki University School of Medicine, 3Cardiovascular Surgery, Kinki University Graduate School of Medicine

キーワード :

血管エコーにおける断層法での病変の評価は,縦断面(長軸断面)と横断面(短軸断面)を観察し適切な断面で計測を行うことが重要である.動脈内膜病変であるプラーク厚の長軸断面での計測は,側壁側を描出した長軸断面では正確なプラーク厚が得られないため,遠位壁の内膜面が長軸断面全域で描出できる最大短径でなければならない.ただ,この長軸断面で計測可能なプラークは近位壁と遠位壁に存在する場合だけであり,多くのプラーク計測は短軸断面で動脈を正円に描出し計測することとなる.特に頸動脈プラークなど0.1mm単位の計測が必要な場合では重要である.また,内膜病変の頂点と血管外膜を結ぶ計測ポイントにも注意が必要である.長軸断面では血管外膜に対して垂直に,短軸断面では血管の中心から放射状にカーソルを置くようにする.さらに,計測の際に用いるトラックボールの1転がりの精度は視野深度によって変化するため,詳細な計測では視野深度を浅くするか,拡大した画面で計測することが必要となる.
大動脈瘤では経時的な血管径の計測に超音波検査が用いられている.腹大動脈では瘤径が5.5cm以上であれば手術が考慮される.近年,広く行われるようになった腹部大動脈瘤ステントグラフト内挿術(endovascular aneurysm repair;EVAR)では,術後合併症の評価のため退院後から定期的に瘤径の経過を造影CTもしくは超音波検査で評価することとされている.なかでも安全で繰り返し行える超音波検査の依頼は増加している.瘤の大きさにもよるがendoleak type2の経過観察において,瘤径が前回と比較し5mm以上大きくなると拡大と判断し10mm以上となれば再手術を考慮する.したがって,正確な瘤径計測が要求される.動脈の短軸断面における瘤径計測の注意点として,前後方向の楕円での描出は,動脈が深部方向に走行しているか,あるいは実際の血管横断面と探触子短軸断面が平行でないことを意味する.一方,左右方向の楕円での描出は,左右方向へ血管が蛇行走行しているか,あるいは実際の血管横断面と探触子短軸断面が平行でないことを意味する.したがって,長軸断面で腹部大動脈の走行を必ず確認したうえで,多くの断面を観察してから最適な断面を選んで慎重に計測する.また,経過を観察する場合には,前回計測部位を確認しておくことが必要である.
超音波検査の誤差は,描出不良による被検者による要因,装置設定不足による誤差,超音波特性の知識不足などによる誤差と,これらを含めた計測部位の違いによる検者間誤差がある.誤差の軽減には,超音波特性を知っていることや検者間の計測部位の周知などで回避できる可能性がある.今回は,血管エコーにおける誤差要因の具体例を示しながら誤差の軽減法について考えてみたい.