尾本 きよか

Kiyoka OMOTO

自治医科大学附属さいたま医療センター総合医学1（臨床検査部）

Dept. of Laboratory Medicine, Jichi Medical University, Saitama Medical Center

キーワード :

【抄録】
体表臓器は乳腺，甲状腺，耳下腺・顎下腺，リンパ節，皮膚・皮下組織，その他と対象範囲が広く，その領域により超音波報告書で記載すべきポイントが多少異なっている．今回は乳腺疾患，甲状腺疾患などを中心に報告書の所見欄に記載すべき事項や超音波専門用語の適切な使用法について説明し，スケッチ作成時や超音波診断，考察欄（超音波所見と臨床診断との関連について）を記述する上での注意点について詳しく説明する．
≪超音波実績証明のために提出する報告書の疾患別内訳≫【体表臓器】
A−1．乳腺疾患：腫瘤を認めた時に記載する項目
　　①部位：A〜E領域，〇時方向
　　②サイズ：a×b（×c）mmまたはcm，縦横比（D/W）
　　③内部エコーレベル：低エコー，等エコー，高エコー
　　④内部エコーの均質性：均一（均質），不均一（不均質）
　　⑤形状：円形，楕円形，分葉形，多角形，不整形
　　⑥境界明瞭・平滑or粗糙，境界不明瞭・平滑or粗糙
　　⑦後方エコー：増強，（不変），減弱，消失
　　⑧その他
　　　　境界部高エコー像（ハロー）
　　　　点状高エコー（微細石灰化），粗大高エコー
　　　　前方境界線の断裂，腫瘤と連続して横走する管状低エコー像（乳管内進展）
　　　　血流シグナルの多寡，血管の走行（腫瘤辺縁に沿う，貫入するなど）
　　　　乳頭-腫瘤間距離，皮膚の肥厚（浸潤）
　　⑨両側リンパ節所見
　＊なお具体的に記載するときには，上記のように項目を列挙する形式にしてもよいし，文章（例：右C領域に12×9mmの楕円形，低エコー腫瘤を認める．境界は・・・）にしてもよい．
【参考資料等】
『乳腺疾患超音波診断のためのガイドライン−腫瘤像形成病変について−』（日本超音波医学会ホームページ「用語・診断基準」より）
乳房超音波診断ガイドライン（改訂第3版）（南江堂）
A−2．甲状腺疾患
　1．甲状腺全体の所見
　　　①甲状腺のサイズ：（正常，腫大，萎縮）
　　　　　右葉：（短軸・横径）mm×（短軸・厚み）mm×（長軸・長径）mm
　　　　　左葉：mm×mm×mm
　　　　　峡部：（厚み）mm
　　　②内部エコーレベル：正常，低下　　内部性状：均一，不均一
　　　③表面性状：平滑，凹凸不整
　　　④血流シグナル：びまん性に増加，局所的に減少・消失
　2．甲状腺結節の所見（結節を認めた時に記載する項目）
　　　①部位：右葉，左葉，峡部；上極，下極；内側，外側
　　　②サイズ：a×b（×c）mm
　　　③形状：整，不整
　　　④境界明瞭・平滑or粗糙，境界不明瞭or平滑，粗糙
　　　⑤内部エコーレベル：低エコー，等エコー，高エコー
　　　⑥内部エコー均質性：均一（均質），不均一（不均質）
　　　⑦その他
　　　　　辺縁低エコー帯の有無
　　　　　微細高エコー，点状高エコー，粗大高エコー
　　　　　周囲臓器（浅頸筋群，気管）との境界
　　　　　血流シグナル：豊富，乏しい，認めず
　　　　　　P.I．（Pulsatility Index；拍動係数）
　　　　　　＝収縮期最大速度（PSV）−張末期血流速度（EDV）／時間平均最大血流速度（TAMV）
　　　　　　R.I．（Resistance Index；抵抗係数）
　　　　　　＝収縮期最大速度（PSV）−拡張末期血流速度（EDV）／収縮期最大速度（PSV）
　3．頸部リンパ節の所見
　＊なお具体的に記載する際は，上記のように項目を列挙する形式のほか，文章調にしても構わない．
【参考図書等】
『甲状腺結節（腫瘤）超音波診断基準』（日本超音波医学会ホームページ「用語・診断基準」より）
甲状腺超音波診断ガイドブック（改訂第2版）（南江堂）
甲状腺結節取扱い診療ガイドライン2013（南江堂）