Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

特別企画 認定超音波検査士取得のための報告書等作成時のポイントと注意点(超音波検査士制度委員会主催)
消化器 

(S172)

認定超音波検査士取得のための報告書等作成時のポイントと注意点−消化器領域−

Points and pitfalls of making a report to obtain a JSUM−gastrointestinal area−

森 秀明1, 西川 かおり1, 関根 智紀2, 山田 博康3

Hideaki MORI1, Kaori NISHIKAWA1, Tomoki SEKINE2, Hiroyasu YAMADA3

1杏林大学医学部第三内科, 2国保旭中央病院中央検査科, 3県立広島病院消化器内科

1The Third Department of Internal Medicine, Kyorin University School of Medicine, 2Department of Laboratory, Asahi General Hospital, 3Department of Gastroenterology, Hiroshima Prefectural Hiroshima Hospital

キーワード :

超音波検査士認定試験では超音波検査実績として20例の抄録提出が求められている.検査士試験に合格するためには抄録の審査と筆記試験(基礎領域および臨床領域)の正答率がそれぞれ60%以上である必要がある.以前は抄録に不備があった場合は受験者に再提出を求め,訂正されれば合格にしていたが,平成25年度からは書類の再提出はなくなったため,抄録の不備は減点対象になり,合否に影響することになった.以下に消化器領域の抄録を記載する際の注意点を述べる.
抄録20例は臨床領域別内訳の疾患コード別に指定された症例数を満たす必要がある.具体的には,C-1の肝臓のびまん性疾患4例以上,C-2の肝臓の良性腫瘤2例以上,C-3の肝臓の悪性腫瘤2例以上,C-4の胆道・膵臓の良性疾患2例以上,C-5の胆道・膵臓の悪性疾患1例以上,C-6の消化管疾患3例以上,必要に応じてC-7のその他の疾患を含めてもよい.その他の疾患は脾疾患,腹腔疾患(腹腔内膿瘍,癌性腹膜炎,腹膜偽粘液腫など),外傷(肝・脾・消化管など)などであり,泌尿器科領域,産婦人科領域,大血管領域(腹部大動脈瘤,大動脈解離など)などの他領域の疾患は含まれない.同一患者で複数の疾患を有する場合は,それぞれを別な症例として扱わないことや健診(検診)の症例を提出できない点に注意する必要がある.また各領域の疾患の内訳は可能な限り重複しないことが望ましい.
超音波検査所見を記載する際は対象臓器だけでなく,たとえ異常がみられなくてもその他の腹部臓器に関しても所見の有無を記載する必要がある.また超音波検査所見の記載欄には病名を記載しない.たとえば「胆囊に胆石を認める」ではなく,「胆囊に音響陰影を伴ったstrong echoを認める」のように記載する必要がある.用語は医用超音波用語集や超音波検査士ガイドラインを参照し,正確な超音波用語を使用する.
略語はごく一般的なもの以外は使用しないこと,もし使用する際は必ず最初に正式名を記載することが望まれる.計測値はミリメートル表示の場合は小数点以下は四捨五入した値を記載する.超音波診断の記載欄には主膵管拡張や腹痛などの超音波所見や症状を記載しない.
超音波画像は診断に耐える画質であること,患者名やIDなどの個人情報を削除することが求められている.画像のスケッチは手書きで行い,鉛筆書きは不可である.また主要な超音波所見とともに臓器や血管などの名称も引き出し線を用いてスケッチ内に記載すること,スケッチでは無エコーな部分(囊胞や血管など)は白のままで,黒塗りはしない点に注意する必要がある.
考察は単に症状や理学所見,血液検査所見,他の画像所見,手術結果などを羅列するのではなく,超音波所見との対比や関連を行うことが必要で,最終診断に至った経緯を記載する.また超音波所見から鑑別すべき疾患や,診断の決め手となった超音波所見なども記載することが望まれる.さらに治療を行った例では治療内容についても記載する必要がある.また他の画像所見を記載する際は,たとえば「腹部造影CT検査で肝細胞癌と診断された」といった記述ではなく,どのような造影所見があり,肝細胞癌と診断されたかを具体的に記載する必要がある.
最終診断名には超音波検査以外で認められた診断名も記載してよい.超音波診断名と最終診断名が必ずしも一致する必要はないが,その場合は考察欄にその理由を説明する.また症例数に含める際は最終診断名で登録する.たとえば超音波所見では肝血管腫(C-2)としたが最終的に肝細胞癌と診断された場合は,C-3の肝臓の悪性腫瘤の症例数に含める.