Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

特別講演 エキスパートに聞く,今の旬
循環器 

(S167)

エキスパートに聞く,今の旬 心エコー図検査による大動脈プラークの評価とその経時的変化

Echocardiographic evaluation of aortic plaque severity and morphology: Long-term follow-up data

泉 知里1, 三宅 誠1, 天野 雅史1, 松谷 勇人2, 桑野 和代2, 橋和田 須美代2

Chisato IZUMI1, Makoto MIYAKE1, Masashi AMANO1, Hayato MATSUTANI2, Kazuyo KUWANO2, Sumiyo HASHIWADA2

1天理よろづ相談所病院循環器内科, 2天理よろづ相談所病院臨床病理部

1Department of Cardiology, Tenri Hospital, 2Department of Clinical Pathology, Tenri Hospital

キーワード :

【背景】
大動脈プラークは脳梗塞などの全身塞栓症における塞栓源と考えられ,高度大動脈プラークは予後不良の因子である.一方で,人口の高齢化に伴い,心臓カテーテル検査や冠動脈インターベンション治療が高齢者にまでなされるようになり,脳梗塞などの塞栓症や腎不全など,大動脈プラークによる合併症が危惧される.
経食道心エコー図検査(TEE)を用いて,上行の一部,弓部,胸部下行大動脈の観察が可能で,大動脈プラークの有無・程度のみならず,形態や可動性などを評価することが可能である
【目的】
経食道心エコー図検査を用いて,大動脈プラークの程度,形態,およびその経時的変化を評価することにより,臨床像を明らかにし,治療,予後との関係について検討した.
【方法と結果】
(1)検討1:大動脈プラークの程度および形態と長期予後の関係
1991-2003年に当院でTEEを施行した症例のうち心房細動,大動脈解離,大動脈瘤などを除いた連続1570例を対象として,5mm以上の高度プラークを揺する症例を検出し,コントロール群と比較し,予後を比較した.またプラーク形態と予後の関係についても検討した.平均フォローアップ期間は8.7年であった.1570例中92例において高度プラークが認められ,コントロール群に比し,死亡率,塞栓症発症率ともに有意に高かった.形態による検討では,潰瘍形成が全死亡に,可動性プラークが塞栓症発症率に関与していた.
(2)検討2:大動脈プラークの経時的変化に関する検討
1991-2011年に当院でTEEを施行した連続2675例を対象として,その中で,3年以上あけてTEEを再検した252例を検出した.それらの症例において,大動脈プラークの変化を評価し,それらに影響を与える因子を調べた.252例中32例で大動脈プラークが進行,7例で退縮した.初回TEEで中等度以上のプラークの存在,喫煙歴,虚血性心疾患の合併,腎機能低下が,プラークの進行の危険因子であった.
【結論】
経食道心エコー図検査で,大動脈プラークの程度,形態を評価し,その経時的変化を追うことにより予後を予想することができ,今後治療につなげることができる可能性がある.