Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

特別講演 エキスパートに聞く,今の旬
乳腺甲状腺 

(S157)

エキスパートに聞く,今の旬 組織弾性評価における「初期圧(Pre-load compression)」の重要性

“Pre-load compression”: substantial concept in tissue elasticity evaluation

梅本 剛

Takeshi UMEMOTO

公益財団法人筑波メディカルセンター筑波メディカルセンター病院乳腺科

Department of Senology, Tsukuba Medical Center Foundation

キーワード :

最近の超音波診断装置の新技術において,超音波組織弾性イメージングの進歩はめざましい.2003年,乳腺領域で臨床応用が開始された“Real-time Tissue Elastography(RTE)”の登場以降,最近では各社の診断装置に“エラストグラフィ(Elastography)”が実装され,多領域にて急速に普及してきている.呼称は同じ“エラストグラフィ”ではあるが,計測される物理量の違い,計測条件の違い,画像構成法の違いなど,各装置によりさまざまな様式であり,得られる情報や計測値は必ずしも同一のものとは限らない.また,いずれの装置においても簡単化した組織モデルに基づいた手法が適用されているため,組織モデルと実際の生体組織との相違による誤差やアーチファクトを生じうる.乳房超音波診断の臨床では,エラストグラフィ検査の際に,はじめに乳房に探触子をあてる強さ(初期圧(pre-load compression))の違いによる画質や計測値の変化が経験される.
われわれは,摘出直後の手術検体を用いて,乳房内各組織の弾性係数(Young’s modulus)を応力基準にて評価し,術前エラストグラフィ所見,病理組織所見と対比する検討を行ってきた.この結果から,1 kPa前後の軽微な応力条件においても,正常組織と病変部との組織弾性の非線形性の違い,すなわち弾性係数の大小の差(あるいは比)の関係に変化や逆転が生じることが示され,このことがエラストグラフィ検査時に経験される,手技の違いによる画質の変化に密接に関わることが確認された.
組織弾性の非線形性は生体組織そのものの特性であるため,超音波組織弾性イメージングの様式を問わず,組織弾性を評価する際に直面する共通の課題と考えられる.本講では,組織弾性の非線形性,初期圧(pre-load compression)の概念などについて概説し,あわせて臨床例を紹介する.
【文献】
Umemoto T, Ueno E, Matsumura T, Yamakawa M, Bando H, Mitake T, Shiina T.
Ex vivo and in vivo assessment of the non-linearity of elasticity properties of breast tissues for quantitative strain elastography. Ultrasound Med Biol. 2014 Aug;40(8):1755-68.