Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

特別講演 エキスパートに聞く,今の旬
消化器 

(S156)

エキスパートに聞く,今の旬 エコーから病態生理の解明へ

Sonography determines the mechanism of the diseases

工藤 篤1, 田中 真二2, 田邉 稔1

Atsushi KUDO1, Shinji TANAKA2, Minoru TANABE1

1東京医科歯科大学肝胆膵・総合外科学分野, 2東京医科歯科大学分子腫瘍医学分野

1Department of Hepatobiliary Pancreatic Surgery, Tokyo Medical and Dental University, 2Molecular Oncology, Tokyo Medical and Dental University

キーワード :

最近,超音波検査の革新的な進歩に大きな注目が集まっている.その進歩を支える二本柱が,造影剤と情報処理技術である.以前から超音波検査と言えば,誰もが簡易に行える非侵襲的な検査であるという認識と同時に,その客観性の評価や見えたものの質的診断の限界が問題視され,MDCTやEOB-MRIとどちらが優れているかなどの議論が大いになされて来た.しかしながら,近年の超音波の進歩は,もはやそういった議論とは全く別次元で起こっている.たとえばReal timeな画像描出能は他のモダリティでは比較できず,その所見でしかわからない遺伝子発現Profileの特性もわかってきた.本講演ではエコーの革新から病態の本質に迫るに至る試みについて述べたい.
はじめに画像の情報処理技術の進歩について述べる.画像の情報処理スピードの革新に伴い,術前画像と超音波画像の同期を可能にするVirtu TRAX,血管内腔からの3Dナビゲーション技術を可能にしたFly thru,高分解能のドプラー技術の極みであるSuperb Micro Flow Imaging(SMI)に至るまでこのわずか数年に爆発的な進歩を遂げて来た.Fly thru, C-SMI,M-SMIの登場でどんな新しい世界が見えるようになったのか,手術技術にどんな革新をもたらしたのかをビデオで供覧する.
次に多くの技術革新を供給したソナゾイド®造影超音波の進歩について述べる.Vascular phase, Kupffer phase, Micro Flow Imaging(MFI), Parametric Imaging(PI)などは超音波診断のQualityを刷新した.PI技術は腫瘍の特性の違いを鋭敏に描写するだけでなく,肝機能を診断できる可能性を持っている.我々は術中造影超音波検査がCT angiographyで見えない新病変を検出し,術式変更を余儀なくされたことを報告した(MitsunoriらJHPBS 2013).またMFIでThunderbolt patternを認める腫瘍は,reticular patternを認める腫瘍と比べて遺伝子の発現Profileが明らかに異なり,特に肝細胞癌の増殖能に関与するGemininを強く発現していることを報告した(Sato KらHepatology 2013).最後に,SMIの登場で造影超音波の技術がどのように変化するのか,共存はありうるのかについて述べる.