Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

特別講演 エキスパートに聞く,今の旬
泌尿器 

(S152)

エキスパートに聞く,今の旬 尿道超音波検査の可能性〜標準的な検査になりうるか〜

Usefulness of sonourethrography: Can it be clinical standard modality?

皆川 倫範

Tomonori MINAGAWA

信州大学医学部泌尿器科学教室

Urology, Shinshu University

キーワード :

歴史的に,尿道の超音波検査は意義も報告数も乏しい.実際,尿道の超音波,あるいはソノウレスログラフィーと聞いて頭にイメージが湧く泌尿器科医がどれほどいるだろうか.尿道の超音波検査は,Rifkinらが1984年に報告したのが最初と思われる.当時は経直腸超音波検査を用いて正常の尿道を観察するものであったが,排尿時の観察であったので観察が不可能な症例が多かったようだ.以後,1980から1990年代にかけて尿道狭窄に関する報告が散見される程度である.尿道膀胱鏡の普及に伴い,尿道内腔の観察が容易でできるようになった現在においては,超音波検査どころか尿道造影の意義も霞んでいる.しかしその後,超音波検査装置の技術は飛躍的に進歩した.画像技術の進歩とデータ保存容量の拡大により,鮮明な所見を動画で評価できるようなった.そして7年ほど前から,私は尿道の超音波検査に取り組み始めた.当初はソノウレスログラフィーという言葉も知らずに工夫をし,可能性を模索していた.生理食塩水を尿道に注入して観察を始め,ゼリーを用いたほうが観察は容易になることを発見した.仰臥位でも経直腸超音波は可能であることがわかり,膀胱留置カテーテルの挿入困難症例で観察を試みた.前立腺肥大症,尿道狭窄や偽尿道など,カテーテル留置が困難である理由が視覚的に明らかになり,的確な判断で留置困難症例に対処できるようになった.そんなときに,ソノウレスログラフィーの報告に気が付いた.しかし,報告のある1980年代といえば,超音波画像は不鮮明で,記録媒体は紙である.それ故に十分な検討がなされる前に廃れてしまった.現在,我々はいくつかの工夫を行って,尿道超音波検査の再生を試みている.前述のように,ゼリーを逆行性に注入すること,経直腸超音波プローブを用いて矢状断で観察すること,そして動画で保存することである.それによって,観察が容易になり,客観性が増した.尿道と他臓器との位置関係の明確さ,立体的な観察,尿道鏡よりも高い客観的と,長さや角度など定量的な所見が得られる点も本法の利点である.本講演では,ソノウレスログラフィーの歴史と我々が開発した変法を紹介する.また,その利点や将来性についても触れて,本法が標準的な検査となる可能性を提示したい.