Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般ポスター 整形外科
整形外科3

(S802)

腰痛の有無において比較した腹横筋の収縮に伴う内腹斜筋の変化

Comparison of changes in the OI muscle associated with the contraction of TrA muscle in subjects with and without lumbar pain

村上 幸士1, 齋藤 昭彦1, 吉川 幸次郎2

Takashi MURAKAMI1, Akihiko SAITO1, Kojiro KIKAWA2

1杏林大学保健学部理学療法学科, 2関東リハビリテーション専門学校理学療法学科

1Department of Physical Therapy, School of Health Science, Kyorin University, 2Department of Physical Therapy, Kanto Rehabilitation College

キーワード :

【目的】
近年,医療現場やスポーツ現場において,体幹の安定化を目的とした体幹深部筋群のトレーニングやそのメカニズムを解明するための研究が行われている.また,リアルタイムに深部組織を,非侵襲的に確認できる超音波診断装置を用いて,腹横筋の収縮を筋厚としてとらえる報告も多数みられている.その一方,腹横筋とともに胸腰筋膜の動きに関与する内腹斜筋後部繊維の変化や腰痛との関連性を比較する研究は少ない.本研究の目的は,腹横筋の収縮に伴う内腹斜筋の変化を腰痛の有無において比較することとした.
【方法】
研究に対して,同意を得られた男性34名(22.9±4.2歳)を対象とした.なお,倫理的な配慮や研究内容などを記載した研究同意書を作成し,個別に説明を行い,被験者が十分に研究に対し理解した上で,直筆での署名(同意)を得た.まず,腰痛評価表にて,腰痛に対する問診・アンケートを行い,腰痛群と非腰痛群に分類した.次に,超音波診断装置(東芝社製NEMIO)での測定は,臍レベルに統一し,腹部周囲にマーキングを行い,画像での確認をもとに最終的なプローブ(7.5MHz,リニア形)位置を決定した.測定肢位は腹臥位とし,安静時は腹横筋の先端を画像端に合わせ,収縮時に変化する腹横筋および内腹斜筋をイメージングし,動画画像としてDVDに記録した.この時,腹横筋の収縮は,口頭指示および超音波画像による視覚的フィードバックにて行った.なお,すべての測定は左右行い,くじ引きにて順不同に実施した.記録した動画画像より画像編集ソフトWin DVDを用いて,静止画像を抽出し,画像解析ソフトImage Jを用いて,安静時および収縮時の腹横筋筋厚および内腹斜筋筋厚を測定し,安静時から収縮時への変化率を算出した.これらの変化率に対し,各群を比較した.統計処理はSPSSを用い,有意水準を5%とした.
【結果】
腰痛に対する問診の結果,被験者34名は,腰痛群16名,非腰痛群18名に分類された.左側,右側ともに,腹横筋筋厚の変化率は有意差を認めなかった.一方,内腹斜筋の変化率は,左側:腰痛群111(+11)%,非腰痛群133(+33)%,右側:腰痛群110(+10)%,非腰痛群130(+30)%であり,両側ともに有意差を認め,腰痛群はいずれも低値を示した.
【考察】
腹横筋は深部に位置し,後方では胸腰筋膜に,前方では腹部筋膜に停止し,その筋膜系を介して腰椎骨盤の安定性に影響を与える.また,内腹斜筋後部繊維も腹横筋と共同腱となり,胸腰筋膜の中層(前葉)に付着し,同様の働きをする.胸腰筋膜は,筋収縮により外側方向に牽引されることで緊張が高まり,脊椎の運動をコントロールし,その胸腰筋膜の緊張には腹横筋の収縮に加え,内腹斜筋の収縮が関与する.本研究の結果,非腰痛群では腹横筋の収縮(筋厚増加)に伴い,内腹斜筋筋厚の変化率も増加した.しかし,腰痛群では,腹横筋の収縮(筋厚増加)に伴う内腹斜筋筋厚の変化率は,非腰痛群と比較して低値であった.なお,腹横筋の収縮に関しては,超音波画像による視覚的フィードバックを用いたため,両群における変化率の有意差はみられなかった.本研究において,腰痛群は腹横筋の収縮がみられても,共同腱となる内腹斜筋後部繊維の収縮は低下していた.そのため,非腰痛群と比較して,胸腰筋膜の外側方向への牽引力は低下し,筋膜を介した脊椎の分節的安定性を得ることができない可能性が示唆された.
【結論】
今後,腰痛を呈し,脊椎の分節的安定性の獲得を必要とする時は,腹横筋に加え,内腹斜筋後部繊維も着目すべきである.また,深部に位置する筋を確認することや効率良くトレーニングを行うために超音波診断装置を用いることは有用と考える.