Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般ポスター 脳神経
脳神経/TEE

(S799)

筋萎縮性側索硬化症の診断における神経超音波検査の有用性

Usefulness of neurosonography in the diagnosis of ALS

高松 直子1, 森 敦子1, 野寺 裕之1, 島谷 佳光1, 和泉 唯信1, 西尾 進2, 山尾 雅美2, 鳥居 裕太2, 山田 博胤2, 佐田 政隆2

Naoko TAKAMATSU1, Atsuko MORI1, Hiroyuki NODERA1, Yoshimitsu SHIMATANI1, Yuishin IZUMI1, Susumu NISHIO2, Masami YAMAO2, Yuta TORII2, Hirotsugu YAMADA2, Masataka SATA2

1徳島大学病院神経内科, 2徳島大学病院超音波センター

1Department of Neurology, Tokushima University Hospital, 2Ultrasound Center, Tokushima University Hospital

キーワード :

【はじめに】
Amyotrophic lateral sclerosis(ALS)は上位および下位運動ニューロンが変性する疾患で中年以降に発症することが多く,有病率は10万人当たり2,3人である.
生命予後は各患者によって異なるが,3年から5年で呼吸筋麻痺を生じ死亡する例が多く,人工呼吸器を装着することにより延命できる..日本では諸外国に比べ人工呼吸器を装着する患者が多い.診断は臨床症状や電気生理検査によって行われるものの,進行性で予後不良のため,その診断は患者の人生を左右するといっても過言ではない.したがって,正確かつ早期に診断することが重要である.
【目的】
頸部神経根,末梢神経の径および断面積を神経エコー検査により計測し,これらの指標がALSの軸索変性を反映するか否かについて検討すること.
【方法】
Awaji基準によって診断されたALS 35例(平均年齢:58±2歳,男性20例,平均罹患期間:2.9±2.0年)および健常者37例(平均年齢:55±8歳,男性13例)を対象とし,両側の頸部神経根(C5,C6,C7)の径およびC6の断面積を計測した.超音波診断装置はGE社製Logiq 7で,11MHzリニアプローブを用いた.頚部神経根とは脊髄の髄節に直接出入りする神経線維であり,頸動脈エコー検査を行う要領で椎骨動脈を描出し,プローブはその位置で固定したまま角度を後方に傾けると神経根が描出できる.正中神経および尺骨神経は前腕にて径および断面積を計測した.
【結果】
両群のBody Mass Index(BMI)には有意差を認めなかった(ALS:21.1±3.6,健常者:22.5±3.3).頸部神経根径はC5(ALS:1.94±0.5mm,健常者:2.41±0.4mm p<0.001), C6(ALS:2.43±0.5mm,健常者:3.61±0.4mm p<0.001), C7(ALS:3.31±0.6mm,健常者:3.77±0.5mm p<0.01)とALS患者では健常者と比較して有意に小であった.また,C6断面積も同様に(ALS:5.36±1.6mm,健常者:7.60±1.6mm p<0.001)と健常者に比べて有意に小であった.さらに,ALSの正中神経径および尺骨神経径は(正中神経=ALS:5.74±1.5 mm,健常者:6.72±1.2 mm,p=0.015;尺骨神経=ALS:4.12±1.3 mm,健常者:5.34±1.3 mm,p<0.01)健常者と比較して有意に小であった.加齢の影響を検討したところ,正中神経径および尺骨神経と年齢の間には明らかな相関は認められなかったものの,C5,C6,C7の頚部神経根径は年齢と負の相関が認められた.ROC曲線を用いた検討で,ALSの診断において感度,特異度がともに優れていたのはC6あるいはC7の頸部神経根径であった.
【考察】
2011年にMisawaらはALSの診断基準(Awaji基準)で重要視されている筋の線維束性収縮を針筋電図よりも超音波検査のほうが,より高感度で検出できると報告した.
また2011年にCartwrightらは,超音波検査で末梢神経と筋を観察することがALSの診断に有用であると述べている.しかしながら,頸部神経根径について検討している報告はまだない.今回我々は,ALSの頸部神経根および末梢神経は,健常者と比較して有意に萎縮していることを神経エコー検査で証明した.また末梢神経径,断面積よりも頸部神経根のほうが,ALSの感度,特異度に優れていることが分かった.ALSはより末梢側の神経から障害されるといわれているが,近位,遠位筋の両方を支配している神経根径および断面積は
軸索の病変を高感度に反映していると考えられた.
【結語】
ALSの診断において,神経エコー検査を用いた頸部神経根および末梢神経径の評価が有用である.