Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般ポスター 血管
血管

(S792)

腹部末梢血管エコースクリーニング・ABI検査を契機に発見された大動脈縮窄症の一例

Clinical Utility of Vascular Ultrasound Screening with Ankle-Brachial Index; A Coincidentally Finding Case of Aortic Coarctation

高尾 壽美惠1, 東 真美1, 師岡 紗代1, 中川 京子1, 倉重 康彦4, 白石 哲史2, 樋口 誉則3, 新谷 嘉章3, 古賀 久士3, 古賀 伸彦3

Sumie TAKAO1, Mami HIGASHI1, Sayo MOROOKA1, Kyouko NAKAGAWA1, Yasuhiko KURASHIGE4, Tetushi SHIRAISHI2, Takanori HIGUCHI3, Yoshiaki SHINTANI3, Hisashi KOGA3, Nobuhiko KOGA3

1社会医療法人天神会新古賀病院生理機能検査室, 2同放射線部, 3同循環器内科, 4社会医療法人天神会古賀21病院生理機能検査室

1clinical laboratory, Shinkoga Hospital, 2radiology department, Shinkoga Hospital, 3cardiovascular medicine, Shinkoga Hospital, 4clinical laboratory, Koga 21 Hospital

キーワード :

【はじめに】
先天性の大動脈縮窄症の場合の多くは大動脈弓遠位部に狭窄をきたす,一方後天性の大動脈炎症候群によるものは狭窄部位や範囲も様々で異型大動脈縮窄症とも呼ばれている.
当院では2012年9月から動脈硬化危険因子を有する患者に対し,短時間で全身の動脈硬化性病変を発見することを目的に血管スクリーニングエコー検査を導入している(検査範囲:頸動脈,腹部大動脈,腸骨動脈,腎動脈,腎,前後頸骨動脈).
今回我々は腹部末梢血管エコースクリーニング検査・ABI検査を契機に診断し得た成人の大動脈縮窄症を経験したので報告する.
【症例】
43歳,女性
【既往歴】
生理不順
【現病歴】
乳児期に心雑音を指摘されるも異常なしと診断されていた.2013年11月胸部絞扼感持続のため当院救急搬送.心電図でI aVL V5 V6 ST上昇,心エコー図検査で側壁基部の低収縮,ラピチェック陽性より急性側壁心筋梗塞と診断,緊急心臓カテーテル検査適応とした.両側大腿動脈触知不良であったため,右橈骨動脈より施行.造影上seg12閉塞に対しPCIを施行した.第7病日に全身精査目的のために施行したABI検査,腹部末梢血管エコースクリーニング検査で異常所見があり精査となった.
【来院時身体所見】
BT36.7℃,BP:116/72mmHg,HR87/min,SpO2 100%
心音:2RSB-4LSBに収縮期雑音LevineⅡ/Ⅵ聴取 上肢血圧左右差なし
【来院時検査所見】
(心電図)HR75bpm洞調律I aVL V5 V6ST上昇あり
(胸部レントゲン)CTR42% 肺鬱血なし
(血液検査)ラピチェック陽性,WBC 10230 /μL,AST 78 IU/L,ALT 69 IU/L,CK 133 U/L,CK-MB 4.7 U/L,CRP 0.3 mg/dl以下
(ABI)右0.55,左0.54
(超音波所見)
血管エコー:腹部大動脈10mm,大腿動脈7mmと細く,下行大動脈よりも末梢側の血流波形はすべて単相性波形を呈していた.中枢側の異常が考えられたため主治医に連絡し精査を進めた.上行大動脈には明らかな狭窄所見無く,両側頸動脈波形正常.大動脈弓は左鎖骨下動脈起始後に狭窄・蛇行しているように観察されたことから大動脈縮窄を疑った.心エコー:左室拡張末期/収縮末期径39/25mm,心室中隔/後壁厚8/8mm,側壁基部低収縮,EF(simpson法)60-65%,大動脈弁は前後タイプの二尖弁,弁尖軽度肥厚,domingあり.PSV 3.1m/sec,PeakPG 38mmHg,meanPG 25mmHg,AVA(連続の式)0.8,AVA(断層法)1.0 moderate AS.ARなし,MR・TR・PRそれぞれ軽度.
(大血管造影CT)大動脈弓遠位部(左鎖骨下動脈分岐直後)に高度狭窄を認める.管後型大動脈縮窄症.動脈管開存なし.側副血行路として両側肋間動脈,両側内胸動脈,両側外側胸動脈,背部筋肉群内の動脈枝などの著明な発達を認めた.高度狭窄後の下行大動脈径22mm,腹腔動脈起始部レベル10mm,腹部大動脈分岐部レベル9mm.
【考察】
超音波検査では狭窄部位の詳細な評価は出来なかったが,ABI検査結果や頸動脈,腹部大動脈,下肢動脈の血流波形や形態などの所見から逆算し,診断に結びつけることが出来た.本症例は高度狭窄を有するものの,大動脈縮窄に特徴的な身体所見に乏しく,スクリーニング検査をしていなければ同定は難しかった.今後の治療方針は現在検討中である.
【結語】
腹部末梢血管エコースクリーニング・ABI検査を契機に発見された大動脈縮窄症の一例を経験した,診断に超音波検査が有用であったため報告する.