Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般ポスター 血管
血管

(S792)

IVR施行したBudd-Chiari症候群の1例ー超音波による閉塞部性状診断の有用性ー

Budd-Chiari syndrome treated by IVR - usefulness of vascular ultrasound -

高瀬 圭

Kei TAKASE

東北大学病院放射線診断科

Diagnostic Radiology, Tohoku University Hospital

キーワード :

【目的】
Budd-Chiari症候群のIVR治療において,超音波による閉塞部性状診断が手技遂行に有用であった症例を報告する.
【対象】
20代女性,下腿浮腫と低たんぱく血症の精査のため当院紹介.造影CTにて下大静脈上部狭小化が疑われた.中肝静脈閉塞も疑われBudd-Chiari症候群を念頭に下大静脈造影を施行したところ,下大静脈の8mm程の長さの閉塞が認められ,確定診断となった.平均下大静脈圧と右心房圧は17mmHgの圧較差を認めた.
【方法】
IVRが計画されたが,CTにて閉塞部の下大静脈性状が不明瞭で血管内腔にガイドワイヤーを通過させる内腔の存在の有無が判定困難であった.下大静脈閉塞部を経腹壁超音波にて観察すると,5mm径の閉塞した内腔が描出された.短区域閉塞部の血管壁は保たれており,内腔に充填物が認められた.当初はブロッケンブロー針による閉塞部鋭的突破の方針であったが,内腔性状が確認されたため閉塞部走行を超音波観察下に体表上にマーキングし,マーカーに沿ってMullins経中隔用sheath(超音波による走行診断の角度に合わせて蒸気形成後使用)を方向付けた上で0.035 guidewireにより鈍的に安全に閉塞部を右心房まで通過できた.
閉塞部を直径10mm 4cm長バルーンカテーテルにて拡張し,下大静脈閉塞部拡張が可能であった.拡張後は下大静脈血流良好となり,圧較差減少した.
【考察】
Budd-Chiari症候群の下大静脈閉塞部の性状は薄い膜様の閉塞から,ある程度の長さを有する閉塞まで様々である.膜様閉塞の突破には通常ブロッケンブロー針による尾側からの通過やTIPS針による頭側からの通過が用いられるが,本症例のように閉塞部に下大静脈外径の狭窄を有する例では鋭的突破は手技的に難度が高く,また,血管外をガイドワイヤーが通過して合併症を来す危険性もある.肝部下大静脈のため閉塞部性状診断はCTではコントラスト上困難な場合もある.本症例では,CTにて閉塞部の血管走行が不明であったが,経腹壁超音波にて閉塞部の血管径はある程度保たれており走行も把握できたため,動脈系の血管閉塞に準じて閉塞部の鈍的通過が可能で,引き続きバルーン拡張による治療を施行できた.ブロッケンブロー針による通過では血管外をディバイスが通過する可能性もあり,超音波による治療計画が有用であったと考えられる.
【結論】
超音波による静脈閉塞部性状診断は,Budd-Chiari症候群のIVR治療前診断に有用である.