英文誌(2004-)
一般ポスター 血管
血管
(S790)
栃木県民における総頸動脈最大内中膜複合体厚の検討
Maximum intima -media thickness of common carotid artery in Tochigi prefecture citizens
豊田 茂1, 竹川 英宏2, 岡部 龍太2, 3, 岡村 穏2, 大門 康寿2, 岩崎 晶夫2, 西平 崇人2, 平田 幸一4, 井上 晃男1, 髙田 悦雄5
Shigeru TOYODA1, Hidehiro TAKEKAWA2, Ryuta OKABE2, 3, Madoka OKAMURA2, Yasuhisa DAIMON2, Akio IWASAKI2, Takahito NISHIHIRA2, Kouichi HIRATA4, Teruo INOUE1, Etsuo TAKADA5
1獨協医科大学心臓・血管内科, 2獨協医科大学神経内科脳卒中部門, 3公立阿伎留医療センター内科, 4獨協医科大学神経内科, 5獨協医科大学超音波センター
1Cardiovascular Medicine, Dokkyo Medical University, 2Stroke Division, Neurology, Dokkyo Medical University, 3Internal Medicine, Akiru Municipal Medical Center, 4Neurology, Dokkyo Medical University, 5Center of Medical Ultrasonics, Dokkyo Medical University
キーワード :
【目的】
栃木県は心疾患および脳卒中の年齢調整死亡率が男女ともワースト5位以内となっている.そこで栃木県民における頸動脈病変の現状について検討を行った.
【対象と方法】
対象は,獨協医科大学病院のある壬生町において2013年10月27日に開催された「第27回壬生町健康ふくしまつり」で,無料の頸動脈エコー検査の申し込みをうけた82例である.頸動脈エコー検査前に全例アンケート調査ならびに得られたデータについて学会発表や論文作成の承諾を得た.アンケートは,年齢,性別,喫煙ならびに飲酒の有無,健康診断や病院で高血圧,脂質異常症,糖尿病の指摘または診断をうけた有無,またこれらの疾患について治療を行なっているかを確認した.加えて,心臓病の有無,脳卒中の有無,抗血栓薬内服の有無についても調査した.頸動脈エコー検査は座位で左右の総頸動脈を確認し,最大内中膜複合体厚(IMT-Cmax)を測定した.アンケート調査に記入漏れのあった2例を除き,79例(平均年齢64.5歳,男性17例)について解析を行なった.統計はIMT-Cmaxに関係する要因をスピアマンの順位相関係数を使用し,統計学上有意となった項目を求めた.さらにこれらの項目を使用し,IMT-Cmaxが1.1mm以上と関係する指標をロジスティック回帰分析で解析した.なお頸動脈病変を認めた例は再評価や危険因子の管理を含めた治療について当院または近隣の施設へ情報提供書を作成した.
【結果】
背景因子では,喫煙1例,飲酒11例,高血圧29例,降圧薬服用25例,脂質異常症32例,脂質異常症治療薬服用21例,糖尿病9例,糖尿病治療薬服用またはインスリン治療7例,心臓病15例,抗血栓薬服用6例であり,脳卒中既往のある方はいなかった.IMT-Cmaxの平均は右0.67mm,左0.74mmであり,IMT-Cmaxとしては0.78mmとなった.また,IMT-Cmaxが1.1mm以上は8例みられた.IMT-Cmaxと相関が得られたのは年齢(p<0.001),高血圧(p<0.05),降圧薬服用(p<0.05),糖尿病(p<0.0001),糖尿病治療薬服用またはインスリン治療(p<0.001)であった.一方,これらの要因のなかでIMT-Cmaxが1.1mm以上と関係するものはなかった.
【考察】
IMTに関するメタ解析では,個々の変化を追跡したものではないがIMTの増加は心血管障害発症と相関しないとの報告がなされており,初回のIMT測定が重要と推察される.本検討では栃木県民のIMT-Cmaxは1.0mmを超える値ではなかった.本点からは心血管障害の発症のリスクは,高率ではないと考えられる.しかし検査を希望するという健康志向の高い県民であった可能性は否定できない.また,栃木県では今回の解析結果から特に高血圧と糖尿病に注意すべきと考えられた.
【結論】
少数例の検討ではあるが,栃木県民のIMT-Cmaxは0.78mmであり,高血圧と糖尿病への早期介入が重要課題である.