Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般ポスター コメディカル
消化器・泌尿器

(S784)

原発性膵癌との鑑別に苦慮した肺癌膵転移の一例

A case report of Pancreatic metastasis from Lung cancer difficult to distinguish from Pancreatic cancer

仲尾 洋宣1, 長尾 康則1, 石原 茂秀1, 西脇 博1, 大澤 久志1, 加藤 統子1, 前野 直人1, 仲尾 里菜1, 石川 英樹2

Hironobu NAKAO1, Yasunori NAGAO1, Shigehide ISHIHARA1, Hiroshi NISHIWAKI1, Hisashi OOZAWA1, Noriko KATOU1, Naoto MAENO1, Rina NAKAO1, Hideki ISHIKAWA2

1公立学校共済組合東海中央病院医務局診療放射線科, 2公立学校共済組合東海中央病院消化器内視鏡センター

1The department of radiology, Tokai central hospital, 2Gastrointestinal endoscopic center, Tokai central hospital

キーワード :

【はじめに】
転移性腫瘍は全膵腫瘍の2〜4%と言われている.転移性膵腫瘍の原発巣としては腎細胞癌の割合が最も多く,肺癌からの膵転移は稀である.今回,右肺下葉に肺癌,肺門リンパ節転移を認めFDG-PETによる全身転移検索にて膵体尾部に集積像を認め,原発性膵癌との鑑別に難渋した肺癌膵転移の一例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.
【症例】
70歳代男性.主訴は咳.既往歴は特記すべきこと無し.喫煙10本/日,7年前から禁煙.現病歴は2012年4月中旬から続く咳が気になり,かかりつけ医受診.胸部レントゲンにて右肺下葉に陰影を指摘され同年5月中旬に当院呼吸器内科紹介受診.精査目的で施行した胸部CT検査にて右肺下葉に肺癌を疑う陰影を認め精査目的で入院となった.入院時血液検査所見では,CRP 3.55mg/dl,LDH 287IU/l,P-AMY89IU/l,血清アミラーゼ195U/lと高値を認めた.肝胆道系酵素は正常範囲内であった.腫瘍マーカーはCEA8.39ng/ml,シフラ21-1 29ng/ml,SCC抗原16.3ng/mlと高値を認めた.胸部CT検査で認めた右肺下葉の陰影の精査目的で施行された気管支鏡による生検にて扁平上皮癌と診断された.FDG-PETによる全身転移検索にて縦隔リンパ節,膵体尾部に集積を認めた.膵体尾部集積像の鑑別診断目的にて腹部超音波検査を施行した.腹部超音波検査では膵体尾部に37×30mm大,やや低エコーで境界部不明瞭の腫瘤を認めた.カラードップラーにて血流シグナルは認めなかった.ソナゾイドによる造影超音波検査では15秒後より周囲から濃染され40秒後あたりでピークとなり60秒後あたりからwash outを認めた.クッパー相で肝臓に転移を疑うSOLを認めなかった.造影CT検査では膵体尾部に動脈優位相より弱い造影効果を伴う腫瘍を認めた.ERCP検査では主膵管は体尾部で腫瘍の圧排による狭窄を認め,尾側膵管の軽度拡張を認めた.胆管に拡張,閉塞性病変は認めなかった.EUSでは境界明瞭,辺縁一部不整33×24mm大の低エコー腫瘤を認めた.カラードップラにて血流シグナルを認めなかった.これらの所見では膵原発の腫瘍と転移性膵腫瘍の鑑別が困難であったため,22G Expectct穿刺にてEUS-FNAを施行し,核クロマチンの増量等の所見がみられる異型細胞が認められ,右下葉の肺癌と類似していたため肺扁平上皮癌(Squamous cell carcinoma)の膵転移と診断された.
【考察】
転移性膵腫瘍の多くは全身への転移,播種の一部分症として発見される.当院においても肺癌を指摘しFDG-PETによる全身転移検索により膵臓への集積を認めたことにより発見された.転移性膵腫瘍について,SwensenらはERCPやCT,USなどの画像診断上,転移性膵腫瘍と原発性膵腫瘍の間に違い認められなかったと報告しているが,関らはUSやCT,血管造影では鑑別が困難で,ERCPで主膵管の圧排像,半月状途絶像が転移性膵腫瘍の特徴であると報告している.当院の症例においては,ERCPにおいて膵腫瘍の圧排による主膵管の狭窄を認めたが特徴的な狭窄像ではなく,US,造影CTなどの画像診断からは確定診断することができなかったためEUS-FNAを施行した.EUS-FNAによる細胞診により確定診断することができたため,転移性膵腫瘍と原発性膵腫瘍の鑑別診断においてEUS-FNAは有用であるといえる.転移性膵腫瘍,特に肺癌膵転移の報告が少なく特徴的な画像所見の報告も少ない.今後,転移性膵腫瘍の症例を集め,USの画像所見,造影USでの造影パターンなどを検討していきたいと思う.